嘉彦エッセイ


第102話(2012年12月掲載)


          



『朝令暮改は優柔不断に優先する』

   この言葉は、サラリーマン時代に尊敬する社長から、管理職のマネージメントでの重要なキーワードとして教えられた言葉だ。
この言葉の心は、「管理者がぐずぐず(優柔不断)していると部下は何をしたら良いか路頭に迷う。迷っているうちに余計なことをしでかしてしまう。
早く(決め)指針を与えよ。そしてそれが誤りなら、朝令暮改すればよい」・・・スピードあるマネージメントの大事なポリシーであり、少しでもそうしようと努力をした。
事あるごとに「俺は“優柔不断”してはいないか」と自分をチェックしたものだ。



   独立してからも、ついつい怠け癖のある性分から、“まだ明日がある!”の判断を避けるように心がけるようになった。
先送りしたところで、所詮自分で解決しなければならないからだ。確かにかつては相談する相手や行動するスタッフがいたが
、資料作成から準備や手配すべて自前だから、どんどん決めなければ進まない。
何年も続けると性格まで変わったような気がするが、このごろまた怠け癖が頭をもたげているような気がする。


民主党が崩壊しつつある。今回の選挙はどのような結果になるか不詳だが、多分惨敗だろう。


   彼らは何しろはっきり決めない。実は決められないのだ。選挙直前には反省から決めようと言い始めたが、
そもそもリーダー(代表)を選んでも代表の考えに従わず、それぞれ勝手に賛成・反対を唱え、党として決めきれずに、離散が始まった。

当たり前だと思う節がある。元々自民党の中でも右寄りの人から、社会党の左寄りまでの寄合所帯で意思が
一致するはずがない。元々所属政党でもわがままから所属政党の中にとどまることができなかった人たちの集団。
いくつも政党を作ったり渡り歩いたりしている集団さえある。その環境で集うのであるから、
本来、今度こそはリーダーに従っていくという妥協を覚悟しなければならないのに、
自分の都合で勝手に行動する。やはり人間は変われないのだなとつくづく思う。

政治の世界ではそう簡単に朝令暮改はできないし、してもらっては困るが、誤りに気付いても曖昧むこにするのはもっと悪い。
失敗だったら失敗だった、出来なかったらできなかった、すまない、次善の策としてこうやらして欲しいと、言ってしまえば良い。
十分説明を加えて方向転換(朝令暮改)すればよいのに、しないから信頼を失い支持率が下がる。
民主党初代の首相に至っては「普天間基地を最悪でも県外に移す」大喝采を受けた大見得だが、何も進まなかった。
進めなかった。首相(代表)が言った言葉なのに実行できない現状に対する説明がない。
その間にファッションショーなどでおちゃらけるから、次の発言やアクションに賛同が得られにくくなり、更に悪くなっていく。
まぁこの人は「首相を辞めたら引退する」とまで言った人だが、
今まで居座って、とうとう選挙に出馬さえできないところに追い込まれてしまったが・・・。

人間は、そうそう先を読み抜いて物事を決められるものではない。環境の変化に対しても想定外なる言葉ができたが、
予想しえないことが起きる、都度即決を求められるのであるから、選ばれたリーダーはその瞬間における最良の決断をし、
修正が必要ならその必要性をしっかり訴えて、メンバーは妥協という結論に落ち着かねばならない。
これが最近はやりの言葉の「合意形成」ではないのだろうか。これが出来ない人は民主主義者ではない。

いかなる組織でも、常にこれから起こること、なすべきことに対して、あることを決め、
その決め事で先々の最良の結果を求める。組織とは最小は家庭であり、
自治会や親睦会からスポーツ団体などのボランティア組織、そしてお金が動く企業や
政治の世界とだんだん他人への影響する責任の重さや内容が変わってくる。


  時に過去の問題を反省して繰り返さないようにすることもあるが、多くは将来を予測して、
その将来の姿を共有してそこに進む。
進めさせるのはリーダーの決断、決断させるためにはスタッフの意見が大きな働きになる。
此処には必ず妥協がある。妥協が無く円満に決まるのは付和雷同型の集団だ。
議論を放棄して決める方法に良くみられるのは「○○に一任!」の決着。
しかしこの一任のやり方の多くは今の民主党の様にバラバラになる恐れを持っている。
なぜならばどのような結論が出るか不詳のまま一任するのであるから、当然その後の異論噴出は目に見える現象。
一任したらもう異論は唱えてはならないのが原則だ。それが嫌なら議論をし尽くしたうえで、妥協によって結論を出す。
その結論を引き出す時間が長引く様な時に、リーダーはリーダーシップを発揮して、妥協できる案、
若しくはリーダーの裁量による結論を出すことではないのだろうか。


決めなければ組織は動けない。決めたことがまずければ迅速に変更処置をとる…当たり前のことだが、
多くの組織は動くための決め事さえ曖昧なことが多く、妥協点は過去と同じ(前年並み、前回並み)
これでは進化しないからリーダーシップにはならない。ただ決めればよいと言っているのではない。
どれだけの進化をさせるのかを決める、その進化は競争や時代に合っているか確認が必要で、
その結論(進化)を決める。これが決めるという定義だ。

進化についても一言触れておこう。自分たちの決め事と時代の進化を比べ、時代の方が進んでいたら、
その決め事は、仮に従来より進化していても相対的には退化だ。
進化とは時代の進化以上の内容を以って初めて進化。その進化を決断できない人はリーダーにはなれない。



決めなければ進まないんだよね・・・。




    (株)VPM技術研究所 所長 佐藤嘉彦 CVS-Life, FSAVE