嘉彦エッセイ


第103話(2013年01月掲載)


          



『夢』


新年おめでとうございます。皆様には輝かしき新年をお迎えになられたこととお喜びを申し上げます。

この、『千載一遇』 嘉彦のエッセイシリーズに今年もお越し下さり感謝申し上げます。
つたないエッセイも100話を超え、時折ネタ切れもありその中から、精一杯問題提起や思い入れを書き綴って参りました。
今年もこのエッセイから何か共感や楽しみが生まれて来るならば、と小さな夢を抱きながら書き綴りたいと思います。

本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

私はいつの間にかこのような文章を書くのが好きになりました。
1987年いすゞ自動車勤務時代ですが、ある先輩から「改善事例集を作るので体験的なことを書いてくれないか。
共著にして出版される」と依頼を受けた。
雑誌のインタビュー形式で私が掲載されたことは何度かあるが、自分で書いた文が本に載り、
売り出されるのはそれが初めてで、共著で有ったので、印税は細やかであったが頂いた。印税を頂くのもこれが初めてでした。

以降、自分としては良く書いたものだと思うが、連載コラムに都合2年24ヶ月を2回も、著書として共著も含めて8冊、
それにソフトウェア―を入れると11の著作物になるが、良く創って来たものだと自分で感心する。
しかしいつも自分の作品は、自分の体験から次の夢を語るものとして描いてきたように思う。
だから私の著作物にはほとんど引用文献がない。

そんなつたない拙著にも読者の方が、拙著に私の署名を求められる。
第5回目のエッセイ―でも触れましたが(題名も「夢追い人」)その時に書くのが、『Value Engineerは夢追い人』と。

もちろん、英語の本にも日本語をそのまま正しい英語か不詳のまま『Value Engineer is a Dream Chaser』と書いている。
今日はその夢追い人のお話しです。

   お正月、『初もうで』、『書初め』、『初仕事』と初の字が付くものが多いが、
『初夢』もその一つ、「良い夢を見たか」と子供のころに親から良く聞かれたものだ。
戦後の貧しい時代に育った自分にとって、身近にこんなものが欲しいとか、あんなものが食べたいとかの物欲が多かったかもしれないが、夢は夢。体が弱かったこともあってスポーツができるようになりたい、徒競争の一番ビリから抜け出たい・・などいろいろな夢を持ったと思う。

しかし、夢があることで人間はいくらでも強くなっていくものだと思った。
宝くじに当たりたいなどの夢は外れた瞬間にさしたる失望も伴わない夢であるが、自分が描いた真剣な夢は、
それが目標に変わり、頑張りが出てくる。夢を持っている人はいつも輝き強い。
逆に夢を失った瞬間に、気力は勿論、体力も、意欲もすべてを失っていく。

その昔、そう20歳くらいの時か、日めくりカレンダーを作ったことがあるが、その時にある日の言葉に『自分の力いっぱいに生きるとき、人は最も強く美しくなる』と書いたことがあった。そうだこれが夢を追う人の姿なんだと今思う。

  震災に遭われた方々はすべての夢(夢だけでなく、現実の家族や家屋を失い)を失い失望のどん底、
そこからまもなく2年、多くの方々が必死に自分の夢を描いて、それに向かって努力されている姿はまさに夢追い人の姿に見える。同乗の涙を何度流したことか。

“震災”が出てきたので私ごとに振るが、音楽家の娘が毎月震災の起きた11日には必ずどこかでチャリティコンサートを開いている。いつまで続けるのか、ミニコンサートで有ったり、少し大きめのコンサートで有ったり、そして今も月に2回は被災地に赴き、今はどうやら瓦礫の処理はなくなったようだが、現地の仮設住宅でコンサートしたり、懇意になった海産物屋さんのお手伝いをしたりしている(ようだ)。
彼女がなぜそんなにのめり込むのかとそっと横から見ていると、どうやら被災地の夢を追う姿、絶望の淵から一縷の夢を見付け出し、その夢を追っている姿に感動しているからだと思う。


  夢は追うだけで自分を満足させてくれる。孫たちの姿を見ていると、あの子たちはどこまで達成したら満足かは知らないが、スキーに行こう、ハウステンボスに行こう、こんな提案に夢を抱き、現地に着くだけでももう夢を達成したように喜ぶ。
それがスキーを履いて悪戦苦闘しても、ますます夢に対する満足が増してきてあっという間にスキーで滑ることができるようになる。一つのテーマ館に行って楽しみを体感すると、またまた夢が大きく膨らみ「あのリフトに乗ってみようよ」「別のテーマ館で・・」となる。
夢は限りなく大きく膨らんでくる。まず夢のきっかけを持たせる、次いで、喜びを感じさせる。苦しみがあっても喜びの方が大きければ必ずそれを広げたくなる。


   私たち社会人の夢は??私は68歳になってしまって、忘れ物は激しいし、体も動かなくなったりの身体・頭脳の機能低下を顧みず、今も独立後のコンサルティングや講演などの仕事をしている。
しかしひところの年間200日稼働からすると随分稼働日が減少し、だんだん夢が乏しくなる。
ご契約を頂いていた会社の仕事が途切れるとますます、夢が減る。自分に新しい夢を作れと言い聞かせても心に失った空白ができると、なかなかその空白を埋めることが難しくなる。他の人に『Value Engineerは夢追い人』と言いつつも、自分が夢を持てなくなる。人間など弱いものだ。

そこでどうやって自分に夢を創りだそうか、そうだ夢を創りだすのだ、そのためにはまず夢に繋がりそうなことを頭の中に書き出してみて、どうしたら実現できるか、いろいろ考えてみる。身近にいくつかテーマが眠っている。掘り起こしてみよう。ビジネスも私的なことも。そう、自分にそう言い聞かせてみたらいくつか夢が出てきた。実現できない否定的なことを考えない。実現する、させるためのいくつもの方法を考えている。
出てきますね、夢が。

今年は私的なこと(特に健康増進)にもいくつか夢を持ち、本業の『モノづくり』の世界では、僭越ながら自分の持っているものを何とか多くの企業やEngineerに引き継いでもらおうと思っている。
   せっかく諸先輩に鍛えられ、もちろん自分の努力も加えて創り上げた技術をみすみす、佐藤嘉彦の世界に留めて終わりたくはない。もっとたくさんの人に伝えよう、残そう。

   少し夢が大きすぎましたかね。


本年もみな様に於かれましては、ご健勝・ご多幸で、夢多き年で有られますようお祈り申し上げます。

    (株)VPM技術研究所 所長 佐藤嘉彦 CVS-Life, FSAVE