嘉彦エッセイ


第108話(2013年06月掲載)


          



『ユニフォーム:スポーツ選手の服装に思う』


 最近のプロ野球選手の服装が気に入らない。
冒頭からズバリ切り込んだが、私はいすゞ自動車に入社して、配属になった(生産)技術部に野球部があって、
人数が足りずに、誘われるままに野球未経験者が仲間に入れてもらうことになった。「いすゞマイティース」の一員になるが、
いかんせん運動は相当鈍い。読者で私を知る方は万能かとお思いでしょうが、陸上選手になったのも毎日40Kmを走って、
走って、走って、修学旅行でも、朝5時に抜け出して京都の町や天の橋立を同僚の竹山君と走っての賜物で、
天性の運動神経の鈍い典型。スキーも努力の結果指導員になるがこれもずいぶん苦戦した。

マイティースの一員になるが、10人のチームで2年間で試合に出ないのは私だけ。
即ち守備に就くとベンチには私一人が残る。惨敗のゲームで最後にピンチヒッターにでも起用してくれるかと思いきや、
それも叶わず、…結論を言うと、そのマイティースは、成長著しく、入部4年後には部員も増えて、
Aクラス(軟式野球は、地域の大会はCクラスから始まって、地域で優勝するとB、Aへと昇格する。
国体予選は、Aクラスで行う)に昇格して、翌年神奈川県の“国体予選”の決勝にまで進む。しかし延長戦の末1対0で負け、
ついに我々は国体選手の経験をすることなく終わるが、
その年の佐藤選手は三塁手でチーム最高打率の確か3割5分くらい打ったと思う。


前置きが長くなった。当時のマイティースに山口さんと言う先輩がいて、この人がユニフォームの着方が素晴らしく、
そっと真似していた。白のソックスはいつも洗濯が済んでいて、それにストッキングをぐっと吊り上げるように履き、
ズボンの裾は少し内側に折り返すように履いていた。長嶋選手の全盛期のユニフォームをイメージしていただければよい。
そしていつも(今は許されない様だが)右の後ろポケットにはタオルのハンカチをきちっと畳んで入れていた。
彼は守備も素晴らしく、バッティングもうまい選手だったが、いつか私が彼のポジションに付くようになった。
私はいつもきちっとした服装をしたが、多くのアマチュア選手は今もきちっと伝統的な服装を続けている。


先日、幸か不幸か高校野球をしっかり見る機会があって、ずいぶん服装が変わってきたなと思った。
アンダーシャツは繊維が変わりピシッとした長袖、ストッキングを履かないチームも出てきたが、
さすが高校野球さほどだらしない服装はない。強いて言うと、なんだ!あの帽子の被り方は!鍔を二つ折りにして、
マークのある正面を立てて、テッペンをへこます。言葉では表せられないが、帽子の脱着は鍔を持つのではなく、
正面のマークの上を掴む。でも優勝した浦和学院は全く変な型にせず、素直に被っていた。帽子には帽子の伝統がある。
負けた済美は醜かった。ここが勝敗を分けたのかもしれない。

この頃のプロ野球選手の服装が気に入らない。何でズボンをあんなに長く、引きずるようにして着るのか。
清原選手が現役時代、2塁から3塁に走るとき、自分の踵を踏んで転んで、ホームを獲れなかったことがある。
私は彼を軽蔑した。カッコつけて成績を落として、これがプロ選手か、と。


ジャイアンツでいうと、主将の阿部や村田、松本、ロペスなどがズボンは短く、ストッキングはやめて
(実はストッキング履きにくかった)ハイソックスを着用して機動性を上げ、だらしない引きずるユニフォームではない。
長いズボンを着用しているが、ホールトンや菅野は足首が締まるユニフォーム。
スパイクシューズがしっかり見える長さを着用。これなら邪魔にならない。


大リーグのゲームを先日TV観戦したが、日本人のようなズボンの裾を引きずる選手はまずいない。
元々足が長いからそこまでする必要はないのかもしれない。イチロー選手は相変わらずストッキング。
機能(運動性)を果たさないものは廃れるのである(やっとVEが出てきた)


プロスポーツ選手は機動性を求めるのか、機動性を落としても見た目のファッションを取るのか・・・
何年か前まで、キャッチャーがズボンでボールを拭くので、その部分だけ当て布(パッチ)をしていた選手がいた。
拭いて切れてきたらパッチを交換する。モノを大事にする良い発想。
プロは頂点の世界、多くのアマチュアが目指すポジションにあって、やはり模範的な服装をしてもらいたいと思う。
実は私は最初キャッチャーで、ズボンにパッチを当てていたことがあった。ユニフォームは1枚しかないからね。


それと、伝統のスタイルについても考えてみたいと思う。馬術競技の選手は、ジャージで鞍上の人にはならない。
きちっとネクタイをして、馬術用のスーツを着る。アイスホッケーはアイスホッケーらしく、
アメリカンフットボールはアメリカンフットボールらしき服装で戦う。野球には伝統がないのだろうか


会社のユニフォームも大事だ。私が仕事で17年もお付き合いした、新潟の会社は全員が(社長まで)同じ服装、
名札は所属・役職を付けず、名前のみ。これなら入社時の名札が社長になるまで使える。富山の会社では髪の染色、
メガネのフレームまで規制して、服装の乱れ=心の乱れ=品質の乱れにつながると、しっかり服装を整えている。
現場で白スニーカーは全員真っ白!服装は大事なんです。

1993年5月Jリーグがスタートした。期待に反してなかなか人気が出ない。球団を維持できないチームも出てきた。
横浜フリューゲルスなるチームが消え、マリノスと合併したりした。

不人気の基はあの汚い髪と髭。ラモス瑠偉は外国人だから別にしても、日本人選手が一流にもならないのがかっこをつけて、
ロン毛の茶髪は全く頂けなかった。無精ひげのような髭をたくわえ、あれを誰がかっこいいと思っただろうか。
川渕チェアマンの経営もうまかったが、選手がきれいになっていき、プレーに集中するうちに、海外からオファーが来るようになり、
香川真司や岡崎などを中心に今や20人を超す選手が海外で活躍している。
茶髪は本田圭佑だけだ(彼は自分の位置をアピールするためだとの説がある)そうしたらどうでしょう。
2部リーグも大人気(大ほどではないが)地域に密着させる政策(川渕さんの成功マネージメント)も当たってか、
サッカーは大人気スポーツに成長していった。汚らしい選手がいない。
本当に子どもからサッカーにいそしんで人口が急増している。みんなきちっとしたユニフォーム。

私の孫は5歳からアメリカンフットボールの子供のチームに入っている。先日ようやく背番号(7)の付いたユニフォームを
着ることができた。孫は喜んで着て見せた。自慢気の顔、じいはかわいくて抱きしめた。
やはりきちっとしたユニフォームは、かわいい。

(ちなみにじいの野球のユニフォームの背番号は7、サッカーのユニフォームも7でした。)

私も仕事に出るときは、仕事のユニフォームに徹するように心がけよう。
(ついクールビズに負けて気持ちまで緩めてしまうことがあるから注意、注意。服装は気分を変えますよ。)



    (株)VPM技術研究所 所長 佐藤嘉彦 CVS-Life, FSAVE