嘉彦エッセイ


第110話(2013年08月掲載)


          



『当選確実』


 参議院選挙が終わった。市会議員の選挙などは、朝から街宣車がうるさく走り回るが、国政選挙、
それも神奈川県を選挙区にする選挙では、あまり我家の方まで票集めに来ないのか、それとも、もう自民党だ、もう公明党だ…
と決めてかかっているのか、静かな選挙でした。


 何カ月も前から結果の予想で自民勝利が伝えられていたが、それでも選挙結果は気になるもので、TVには結構かじりついていました。

 不思議なことに8時に投票締め切りなのに、8時のニュース、8時5分には当選確実がどんどん出てくることです。
どうやら「出口調査」とやらから大勢を読んでいるようだが、全くつまらないニュースになっていた。
数百票の獲得で順位が4位でも1位を差し置いて『当選確実』が付き、画面は花束を持った候補者が万歳の罵声?
の中で頭を下げる光景はいささか白けてしまう選挙だ。我々が投票したあの票はどのように使われるのか。
最終確定、念押しに使うのみか???


 結果はご案内の通り、自民党の圧勝、というより、あの体たらくな民主党や、大成長するかと思っていた維新の会の代表の失言と
分裂の匂いの漂う政党に誰が投票しましょうか。
結局自民党の不戦勝だったということでしょう。


 そして52%という低投票率。これは国民に興味を持たせない政治の在り方の表れだと思います。我々の仕事でアンケートを取ると、
結果だけ纏められて報告が上がることがあるが、答えの比率よりも、そのテーマにどれだけの人が関心を持ったかを論じてみると
重要な問題が浮上してくるものです。
テーマの答えの比率以上に重要なことが見えます。確かに獲得した票の比率では自民党の勝でしたが、
国民の半分が関心を持たない国になったことを大いに憂いなければなりません。


国政を担当する人たちは勝った方は浮かれ、負けた方は幹部の責任問題、責任のなすりあいと辞任騒ぎ、
この国は何なのだろうかと感じさせられました。


 この低投票率は国を亡ぼしていくシグナルであることをどれだけの人が気づいているのだろうか。
後進国だから“アラブの春”が起きたのではない。
国民の関心が政変を呼んだのであって、先進国、民主主義国アメリカでは、黒人少年を射殺した白人の無罪問題が国を挙げて大きな運動に変わってきている。
国民の政治や行政への大きな関心があるからだ。


 低投票率の最たる犯人はマスコミだと私は思う。マスコミは自分たちの予測が当たったことを誇示したくて、
世論はこうだ、有権者はもう民主党離れを雪崩現象の様に・・・などと
最初から負けるように煽って、“ねじれ解消は明白”と何カ月も前から報道している。
そして選挙が近づくと、まるで結果が出たように、当落の印をつけ、自民党は60~70議席獲得と報道する。


国民はすっかり誘導されきって?(選挙に)もう行かなくてもいいや、行くなら勝ち馬に投票を、の心理でか、
つられて投票する人も出てしまう。
昔は判官びいきと言って可哀そうな方に味方することがあったが、極楽とんぼを満喫してしまった日本国民には、
勝ち馬が一番なのだろう。

 決まっている選挙に誰が行くか。と、相成るのである


 当選者へのインタビューで、“アベノミクスは地方にはどう影響を及ぼすか”“北陸新幹線は地方にどう効果をもたらすか”と聞く。
今回は国政選挙だ。国をどう持っていくのかを聞くべきなのに地方への影響ばかり聞く。予想報道からインタビューまで、
マスコミの質が落ちた最たる現象だ。


 7月20日ころから、世界の目が、バッキンガムに向いた。イギリスのロイヤルファミリー誕生。
即ちエリザベス女王の次の、次の、次の国王が生まれるからだ。
男でも女でも最初の子が王位継承権を持つ。
ウィリアム王子の妻、キャサリン妃から第1子が
23日にお生まれになり男子であったことが報道された。
世間が注目したのは男子か女子かが分からないからだ。私はきっと分かっていたのではないかと思う。
医師がそれを医師のところで止めたか、王子にまで伝わったかは分からないが、
“どちらか分からない”から国民は関心を持つ。今回は世界中が持ったのだ。


 上手な報道を望みたい。国民が関心を持つ報道、予測は最小限にして。もっともっと争点を国民にアピールし、
各候補者がそれをどう推進するのかをもっと報道すべきではないのだろうか。
そして各候補者の答えに国民(聴視者)がどう感じたかをマスコミに載せて、さらに(国民を交えた)議論を展開すれば、
候補者にも国民の声が伝わる。
今の報道は候補者を誘導し、国民には押し付けているようにさえ見える。


 ロイヤルファミリーの誕生は世界を動かした。それは関心を集中させる仕掛け?があったからだ。
マスコミは国民に関心を寄せさせ、
国民の声を広く伝える役割を持っていると思うがいかがでしょうか。


    (株)VPM技術研究所 所長 佐藤嘉彦 CVS-Life, FSAVE