過去のノート
2006・12
 シングルライフに役立つ情報満載のHP『ペットと気ままな1人暮らし』とリンク致しました。

 現在最高齢は8歳のグリ、それに続くのが7歳のゴンとオマケだ。このうちグリとオマケ、実の父子疑惑のあるこのオス2羽は元気だが、メスのゴンの衰えが目立ってきてしまっている。
 外見上の問題はないのだが、飛べなくなった。ジャンプ力もない。放鳥時に出てくるのもやっとで、飛ぶと言うより落下しているのに近い。テーブルの上に何とか着地し、精一杯努力して電気ポットの上に行き、そこでひたすらのんびりしている。
 カゴの中では箱巣に入りびたりで、姿が見えず、非常に心配になる。そこで、万一の急変に気づきやすいようにつぼ巣に取り替えた。ついでに上段にも水のみ容器を設置する。より弱ってしまったら、順次工夫していきたいと思う。

 キューとデコの嫁候補は来春頃に探す予定だったが、考えてみれば、これまでのように、一日がかりで遠征したり、何軒も一挙にしらみつぶしに探したりする時間がとれそうにない。
 探すにしても近場を少しずつ回らねばならず、そうなると、思い描くような文鳥(キューの好みを勘案するとサイに似た美鳥系で色の濃い桜文鳥)にめぐり合うチャンスは限定され、かなりの難航も予想される。そこで、早めに少しずつ見て回り、気にいったメス文鳥がいたら確保してしまうことにした。
 ・・・埋立地のホームセンターのメス桜文鳥は、白い差し毛が多く、デコの嫁には良さそうだが、まずはキューの嫁探しが先なのでパス。大岡川沿いの不衛生な老舗鳥獣店にもめぼしいものはおらず、元町近くの新しく出来た店は文鳥を扱っていないようだった(ウサギがメイン)。その近くの世話焼きおばちゃんの小鳥屋さんは、残念なことにたまたま休みであった。そして、お世話になっている動物病院の並びにあるアクア系の店の桜は性別不明で白い差し毛が多い・・・。
 といった経過をたどった12月1日、少し足を延ばすことにする。京浜急行に乗って金沢文庫で下車。久しぶりに称名寺に行きたいなとちらっと思っても、当然そんな寄り道などせず国道16号線沿いを南下、京急ハウツなるホームセンター的なところのペットコーナーに文鳥はヒナしかいないのを確認して、さらに南下する。途中のダイエーの銀行ATMで用事を済ませ、瀬戸神社を素通りし、金沢八景駅前に来て金券ショップを見つけて、使わないビール券を換金する。そういった諸々の雑事をこなしつつ、ひたすらテクテクと歩いて南下。歩道橋を渡り、おじいさんの小さな小鳥屋さんに入る。
 何やら作業をしているおじいさんに愛想の一つも言わずに桜文鳥の成鳥を探す。いた。ペアと、ぶちシナモンとペアになっている桜文鳥の3羽。いずれもちょっと見ただけで、目的にかなった外見の持ち主だとわかる。3羽ならメスもいるだろう。早々におじいさんにメスの桜文鳥を探している旨を伝える。おじいさんは、ぶちシナモンと同居している桜をメスだと言い、見やすいようにそのカゴを手前に引き出してくれた。
 どちらかと言えば、ペアの桜文鳥の一方がよりサイに近い気がする・・・とか、このおじいさんがメスと言うのなら、長々と品定めする事もないだろう・・・とか、いろいろ頭の中に錯綜した思いをめぐらせつつ、せっかくなので10数秒しっかり見たふりをする。気づいた点と言えば、サイより体格が大きそうでクチバシも立派、そして尻尾が換羽中というくらいである。
 基準以上なら問題ないので、すぐに「ください」と言う。おじいさんは、文鳥を入れるボール紙を組み立てつつ「まだ若いよ」とだけその文鳥についてコメントし、4000円と値段を告げる。この標準以下の低価格に何の苦情もないので、即座に夏目漱石さんを4枚手渡し、あとは一目散に帰宅する。
 移動中、カナザワハッケイ、ムツウラ、・・・ケイは前につけたし、ウラはクラと間違えそうだし、・・・カナかムツで、女の子だからカナにしよう。などと考えつつ家路を急ぐ中、自分の名前がカナになったことなど知るはずもない文鳥は、ボール紙の中でゴソゴソと絶え間なく動き回っている。実に活発だ。
 帰宅し体重をはかると24g、満腹なら25gにはなるだろう。平均体重と言える。

 その日から、カナは念のため「文鳥団地」からは遠く離れた場所で隔離飼育する。姿はサイ8割にマル2割といった感じで十分美しい。胸に一点の斑紋もないのは寂しいところだが、贅沢は言えない。
 そういった外見以上に特徴的なのは、人間が好きらしいところだ。遠く聞こえる文鳥の鳴き声に反応して、鋭い単音で鳴くのは想定内だが、人間が近づくと大喜びするのは想定外だ(人気がない場所に置いている)。カゴの前に顔を近づければ、荒鳥なら逃げ惑うものだが、かえって近づいてくるばかりか、止まり木にクチバシをこすりつけるではないか!これは親愛の情の表れで、「恥ずかしい、恥ずかしい」といった感じの文鳥のしぐさだ。せっかくなので、いろいろなさえずりを口笛で披露する。なかでもヘイスケ流のさえずりが気に入ったらしく、うっとりと聞いている。
 これは荒鳥(親鳥が最後まで育てた鳥)ではなく手乗りくずれ(人間が餌づけした手乗りがそのままお店で大きくなった鳥)かもしれない。とすれば、あっさり普通に手乗りになる可能性があり、放鳥を楽しみにしていたが、5日、それを実行し、ほとんどかんぜんに手乗りであることを確認した。人間を恐がらないどころか、人間から離れないのだ。
 初放鳥の5日は朝から「文鳥団地」のキューの横にカゴを移し、お見合い状態としていたが、放鳥時仲良くなったのはデコだった。とりあえず襲いもせず、黙って横にまとわり付く態度に好感を持ったようだ。
 このままデコが飼い主の思惑を打ち破るのか、飼い主の支援を受けるキューがその気になって巻き返すのか、展開が楽しみなところだ。

2006・11

 活気ある今後の展開が楽しみなHP『パッションの部屋』とリンク致しました。

 我が家では以前、家人の生活スタイルの影響で文鳥たちはいろいろな食べ物をオヤツとして盗み食いする機会に恵まれていた。今は定番となるものが決まっている。週に2、3回の特別メニューも固定化し、晩春〜初秋にトウモロコシやエダマメ、秋〜春にミカンといった具合になっている。
 無理に不健康そうなものを与える必然性はなく、またこういった農産物は生協が宅配で送ってくれるので、案外自然派のオヤツの方が準備するのも容易なのだった。
 あやふや極まりない栄養学をふりまわし、この成分が何だかんだと小理屈こねる趣味は皆無だが、ミカンには発ガンを抑制するというβ-クリプトキサンチンが豊富だそうだ。ついでに言えば、トウモロコシはコレステロール値を下げるとかいうリノール酸や、抗酸化作用、ようするに老化を防止するとされるビタミンEが豊富だそうだ。また、エダマメもリノール酸を豊富に含み、老化防止効果があるとされるレシチンを含んでいると言う。
 そんなもの何でも良いだろう。文鳥が好きで食べ、それで中毒が起きず、おまけに健康に良いかもしれない程度でたくさんだ。つまらん理屈は、栄養学者が勝手に考え出していれば良い(ころころ結論が変わるので、テレビ番組を見て信用しきると馬鹿を見る。何しろ否定的な要素もその気になればいくらも見つかるのだ。こういった栄養学を既定の絶対的前提として議論できると考える人がいるとすれば、それが誰であれおめでたいと言わねばならない)。
 栄養学はともかく、今年も温州ミカンによりテーブルがベチャベチャになる季節が、我が家にやって来たことは間違いない現実であった。
 我が家の文鳥たちは例外なく良く食べるが、わけても好物としてるのはノロだ。ミカンの果肉に小さな一粒一粒を、実に丁寧に食べていく。黙々と、執拗に、いつまでもいつまでも。礼儀正しい人が、懐石料理でもおちょぼ口でちょっとずつつまんでいるようだ。みんなこういった上品な食べ方をしてくれれば助かるのだが・・・。 

 今年8歳のグリは衰えを見せずに元気だ。ブランコでピョンピョン跳ねながら、妻のマルにさえずっている。一方、その姪7歳のゴンの方は衰えを見せている。もともと活発に飛び回るタイプではなかったが、着地で体制を崩すような事が多くなった。飛び方もだいぶ重々しい。
 ゴンは電気ポットの上が好きなのだが(鳥用にわざわざ保温状態にしている)、あいにくそこは宿敵のオマケが占拠していることが多い。オマケはゴンの1、2ヶ月違いの弟で、一緒に育ったのだが、なぜか幼い頃からこの姉を目の敵にしている。仕方なく人間の指でくつろぐゴン、のんびり長生きして欲しいものだ。

2006・10

 ヤッチはつぼ巣破壊が趣味と言って良い。つぼ巣の上をかじって青天井にするのみか、わざわざ下もかじって底抜けを策すのだ。
 その両親、ゲンとオッキもかなりのデストロイヤーだが、さらにつぼ巣の中にわざとフンをし、その上に小松菜を敷くという、理解不能な悪癖を持っている。
 オッキの母のゴンもつぼ巣の中でフンをする習慣を持っていて、つぼ巣の交換は頻繁でなければならない。
 親子孫、この連綿と受け継がれるつぼ巣悪利用遺伝子に悩まされ、つぼ巣の消費量に困惑気味の飼い主は、今年も箱巣への切り替えを模索することになった。なぜかは分からないが、箱巣にすると綺麗に利用してくれるのだ。箱巣にすると、繁殖期に力の有り余ったオスが、営巣作業をすることで体力を消費してくれる点もありがたい。
 しかし、箱巣には難点もある。飼育上は、巣材を散らかされるのでうんざりさせられるし、さらに、巣にこもられると姿が確認出来ず不安にさせられる。
 今年はつぼ巣で通すか、箱巣に切り替えるか、当事者以外にはどうでも良いに違いないことをあれこれ思案しながら、9月中旬にはいちおう箱巣の天日干しを済ませ、文鳥たちの様子をうかがっていた。そして、ヤッチの破壊工作により、そのつぼ巣が危険レベルに達した10月1日、一斉に8世帯の巣を箱巣に切り替えることにした(一羽暮らしのキューとデコはつぼ巣)。
 なぜ一斉に切り替えるかと言えば、隣がつぼ巣のままだと、自分のカゴの箱巣に不審を抱く者が侵入し占拠を図ろうとし、逆につぼ巣のままの夫婦が、箱巣に羨望して騒動を起こす恐れが多分にあるのだ。全部箱巣になってしまえば、文句の言いようが無い。
 交換は放鳥中に行う。例年、カゴに帰るとつぼ巣がなくなっているので大騒ぎとなるが、今年は箱巣を知らないカップルがいないので、さほど拒否反応は出なかった。放鳥中の遊び場に、箱巣がひとつ置いてあるのも拒否反応を防ぐのに役立ったかもしれない。よかった。
 翌日には巣材を与える。巣草とい草だ。ヤッチが極めつけの勤勉さ執拗さで巣作りにいそしんでいる。やはり、ほめてやるべきなのだろうか…。

 すでに20羽となっているので、今年はヒナを孵す予定は無いが、来年の春夏にキューとデコに嫁を迎え、秋に次世代を孵してもらうという計画を持っている。そして、すでに探し出すべき嫁文鳥のイメージもはっきりしている。キューには「小柄で色がはっきりした桜文鳥」、デコには「大柄で白い差し毛の多い桜文鳥」だ。なぜなら、それが彼らの好みに相違ないからだ。
 文鳥に外見上の好みがあり、見た目だけで相手を選ぶとは、以前は考えもしなかった。しかし、見た目で選んでいる事例を何度も目の当たりにし、今では嫁や婿選びにおいて見た目を重視する立場となった。
 例えば、セーヤは色の濃い凛々しいオスの桜文鳥(ケイ)だけを追い掛け回していたが、それに見た目が近いと人間である飼い主が選んできたオス(クラ)を一目で気に入った。その父親のオマケは、若い頃からゴマ塩文鳥だけを追いかけまわし、色の濃い桜文鳥(ゴン・セーユ)を目の敵にするので、いっそこれ以上白くなりようが無い白文鳥(シロ)を連れてきたら、一目で気に入った。本当に一目見ただけで言い寄りに行くのだから、この父娘には唖然とさせられた。
 オマケの実の父親らしいグリも、死んだ女房(セーユ)に色柄や体型が似ていると人間である飼い主が見た目で感じたメス文鳥(マル)を、初放鳥の日に一目で気に入り、勝手に後妻に決めてしまった。そのマルにしても、グリのことをお店で同居していたゴマ塩柄のオス文鳥と重ね合わせた節がある。クラにいたっては、他鳥の妻である白文鳥(シロ)に略奪愛を仕掛け、見かねて連れてきた桜文鳥(コウ)をいじめ、白ければ文句無いのかと連れてきた白文鳥(ミナ)とはあっけなくうまくいった…。
 もちろん、さほど外見を気にしないらしい文鳥も多い。しかし、キューとデコには好みがうかがえる。とりあえず両者ともに白文鳥に興味はない。一度として求愛する様子も無ければ、なるべく近づかないようにしているので、それとわかる。そしてキューが求愛する相手は、ほとんどサイとモレに限られており、この両者は「小柄で色がはっきりした桜文鳥」という点で共通している。一方のデコは、白文鳥以外なら何でも良さそうな気配もあるが、それでもヤッチとゲンに非常に執着し、特にゲンに対して求愛し追い掛け回すことがある。ゲンとヤッチは親子で、ともに「大柄で白い差し毛の多い桜文鳥」なのだ。なお、ゲンもヤッチも間違いなくオスなのだが、デコは気にしていない…。
 「小柄で色がはっきりした桜文鳥」のメスなら、何とかなりそうに思うが、「大柄で白い差し毛の多い桜文鳥」のメスという条件は難しい気がする。いちおう今のうちから、チェックしておいた方が良いかもしれない。

2006・9
 「子猫殺し」という日経新聞掲載のエッセイについて、その問題点を『文鳥問題』の論旨からの延長で少し考察しました(コチラ)。この件については、その文章の内容もさることながら、その後の筆者と新聞社の対応にあきれ果てています。
 文鳥の性別は外見で判断出来るとするのは迷信で、特にアイリングについての基準はまったく当てにならないことを、文鳥問題29の続編の形で掲載しました(コチラ)。
 活き活きした文鳥君たちの様子をケータイで楽しめる『
文鳥アパート』とリンク致しました。

 若いメスが多いためか、今年は8月から産卵を始める者が多い。
 マル・コウ・ミナは何となく春から継続してきていたが、中旬にはさらにカン・オッキ・サイも産卵を始めてしまった。暑いのにご苦労なことだ。
 6歳のゴンを別にすれば、残りのモレとシロも他の6羽のメス同様に若いのだが、この2羽には産卵の兆候が見られない。どういった違いがあるのか、皆目見当がつかない。

 産卵し抱卵をすると、オッキは煮干しなどをくわえて飼い主の肩と水浴び用ペットボトルの上を往復し始める。なぜかオッキは自力でカゴに帰れないので、送って行くように要求しているのだ。実に手間のかかる娘と言える。
 このオッキは昨年から続いた月代(サカヤキ、江戸時代のアレ)のようなハゲ頭を、春の換羽でようやく克服したが、最近また禿げてきている。夫のゲンは頬の部分が禿げてきている。案外夫婦でむしりっこしているような気がしないでもない。困ったものだ。
 むしっているわけでは無さそうだが、やはり月代ハゲだったシマは、中途半端に生えて、なにやら貧相な顔つきになっている。・・・もともと姿が良いから箱根山の西から連れてきたのに。いったいあの凛々しい姿は何時になったら戻ってくるのだろうか・・・。

 産卵をしないかわりにシロはクチバシが伸びてきている。昨年購入した際には(もっと長く家にいる気がしてしまうが)可憐な印象だったが、クチバシが長くなり凛とした感じになった。
 それはそれで良いのだが、そのクチバシの成長がやまず、9月になる頃には、ついに下クチバシが上クチバシよりも長くなり、受け口のような形になってしまった。こうなると、床面のエサを拾い食いしづらくなる。さらにこういった形のままクチバシがさらに成長すると、形がゆがんでくるかもしれない。
 普通こういった現象は老化の一種で見られるものと思うのだが、とにかく目の前のテーブルで顔を横向けにしつつ枝豆を拾い食いしている不便を、何とかしてやらねばなるまい。照明を消した瞬間にシロを捕まえ、別室へ連れて行って人間用の爪切りで慎重に血の通っていない先端部分を切ってやる。ついでにキバ状になっているクチバシの片側も少し切り、返す爪切りで後ろ爪も切ってやった。
 これでかみ合わせは良くなったが、今後どうなっていくかは不明だ。

 やはり9月になってからデコの換羽が始まったようだ。2回目。特にいらだつことなく、唯一の握り文鳥であり続けてくれている。それにしても、性格は目に現れるもので、実にボケッとしたトロンとした目をしている。しかし、これこそ手乗り文鳥向きの性格なのかもしれない。有り難いことだ。

 9月には、またヘビの忌避剤を撒いた。今度も100円ショップの物だが、原料が木酢液とニンニクになっている。確かにきついバーベキューの臭いがする。これだと吸血鬼もヘビも嫌がりそうだ。
 これはビーズ状になっていて撒きやすい。こんな物も進化しているようだ。大したものと感心させられる。

2006・8

 鳥カゴで生まれ育った文鳥にとって外世界が不自然な環境であることを『文鳥問題』にまとめました。 こんな理屈は言わずもがなだと思うのですが・・・。

 ヘビの侵入を阻止するのに有効であろうと考え、家の外壁沿いに100円ショップで購入したヘビの忌避剤を撒いてみた。
 木酢を主原料とするこの手の商品が、犬猫に効果があるのは知っていたが、ヘビに効果があるとは知らなかった。確かに、ヘビは嗅覚が優れているので、この正露丸のような臭いが嫌いなら、近づかなくなるように思える。
 少々家の中に臭気が入り込んでくるが我慢しよう。

 ヘビ騒動あり、猛暑あり、長梅雨ありだったが、文鳥たちは特に問題なく元気そうだ。毎日テーブルの上を水浸しにしつつ水浴びに励んでいる。
 最初にキュー、そしてオッキとゲン、デコをどかしてシロ、さらにカン、ハルと水浴びに興じる。この7羽が暗黙に決められた順序で水浴びを始めると、避難の意味もあり台所手のひら水浴びを開催する。参加者はオマケとヤッチ、そして見学者のグリとノロだ。グリとノロは手のひらに入って自分で水浴びをせず、オマケとヤッチが盛大に飛ばす水しぶきを浴びて満足する。
 他の文鳥たちはカゴで水浴びをする。特にモレとシマは一日に何回も外掛け水浴び器に入っている。一方水浴び器ではなく、小さな水飲み器で窮屈な水浴びをするのが、キタとミナだ。なぜか窮屈な方が好きらしい。

 真夏だが、一ヶ月もすればもう秋。キューとデコも他の鳥(メスとは限らない)へのモーションをかけている(ただし白文鳥は眼中にないらしい)。しかし、すでに20羽となっているので、嫁探しは来年にしようと思う。
 つぼ巣だろうと箱巣だろうと産む時は産むが、今年はおとなのペアたちも、しばらくつぼ巣のままにして様子をみようと思う。たぶん、つぼ巣を破壊しつくされ、箱巣に移行せざるを得なくなると思うのだが・・・。

2006・7

 平穏無事に換羽が進行。シマのハゲもなおってきている。
 一方マル・コウ・ミナの3羽は産卵を止めようとしないが、拍子抜けするほど元気だ。マルは巣籠りして巣に手を突っ込まれてもどかないし、コウは巣材にしようと吸水スポンジを破壊してくれるし、ミナは放鳥で出てくると、必ずどっこいしょと巨大なフンを落としてくれる・・・。
 特にコウとミナは、手乗りでもないのにイタズラで、行動も目つきもすこぶる怪しい。コウは巣材のつもりで人間の腕にとまって毛をむしろうとするし、ミナはテーブルの上に置かれたハンドタオルをはるか彼方までせっせと運ぶのに余念が無い。もちろん目の前に人間が座っているのだが、何とも思っていないようだ。
 かたくなにテーブルに降りなかったマルも、6月下旬になって、食い散らかし大会に参加するようになった。4年間もテーブルに降りることの無かった故サムほどのストイックさの持ち合わせは無いようなので、これからは、あっという間に朱にまじわって赤くなるだろう。
 少し先輩のシロは、卓上水浴びをするようになった。我が家にやってきた頃の可憐さはすでに欠片もないと言って良い。

 トウモロコシや枝豆などをたまに振舞ったり、キューやデコをつかまえて文鳥の匂いを求めたり、のんびりと迎えた7月、その初日に招かざる客が2年ぶりにやって来た。ヘビのアオダイショウだ。
 これまでも数年に一度ずつ、なぜか飼い主がいる時に限って侵入し、かわいそうなことになってしまっている。今回も麦茶でも飲もうかと通りかかった際に異変に気づき、ほとんど反射的に尻尾をつかんで・・・以下省略のいつもの末路をたどる羽目となったのは、アオダイショウ君にとってもはなはだ遺憾とするところだ。
 1.5mサイズあったのでカゴの中には入れず、パニックになったモレが網にへばりついたところを噛んでいたらしい。ただ幸運なことに、カゴの桟が邪魔をして胴体で締め付けることが出来ずにマゴマゴしているところを、彼にとっては獲物の保護者、つまりは絶対的な天敵である人間様に発見されたわけだ。運が悪かったとあきらめてもらうしかない。
 侵入口は洗濯機裏くらいしか考えられないのだが、前回の侵入の際に十分釘で打ちつけておいたし、それは特に破損していなかった。
 そもそも、恒常的に侵入が可能な箇所があれば、数年に一度どころか、より頻繁に来襲しても良さそうなものだ。また、せまい隙間から這い入るにしては、カゴに入れないほど胴回りがある大物であった点も不可解だ。
 これも考えにくい話だが、窓やドアの開け閉めの隙に家の中に這い入っていた可能性を考えた方が良いのかもしれない。しかし、そうなると一部屋、二部屋と横断していったことになる。ありえるだろうか?油断もすきも無い・・・。
 モレは脚を少し出血し痛そうだったが、2、3日後には完治した。
 ところが、直接ヘビににらまれたわけではないゴンが、おそらくカゴで騒いだ際に片翼を痛めてしまい、飛行が不自由になってしまった。さらに気にして、悪癖の風切り羽曲げをはじめてしまい、結局2本抜かねばならなくなった。
 前回も噛まれたグリではなく、となりカゴのガブが頓死したし、間接的な影響にも注意が必要なようだ。

2006・6

 4日、生命の危険を感じて獣医さんのやっかいになったヤッチは、薬の効果が絶大だったようで、あっさりとV字回復を果たした。7日には病気であった様子など微塵もなくなっていたが、勝手に止めるわけにもいかないので投薬を続け、10日、約束より早めに病院に連れて行った。
 すい臓の腫れは無くなり、筋肉も戻り、糞便に異常もなしであった。体調が悪かったのが嘘のようだが、いちおう「総合ビタミン剤」をもらって帰宅する(1000円…)。この赤い水溶液は、我が家の文鳥たちに喜ばれない代物で、必要も感じなければ使う気も無かったのだが頂いておいた。少しはもうけて欲しかったのだ。あまり病院に寄り付かない飼い主としても、少しは経営的に余力を持っていただいて、弟子を育てて欲しいと勝手に願っているのだが、それ込みで1000円ではほとんど意味が無さそうだ。
 小鳥の治療も大型の鳥の治療も一緒くたで、何でも入院、何でも手術、ろくに飼育知識もないくせにしたり顔で余計な御託を並べ、一人よがりの浅薄な哲学をひけらかして恥じないような「専門家」などたくさんだ(治療以外の知識の底が浅すぎる自省が無い)。まして、鳥治療の専門家を称するなら、少なくとも計量器の数値など頼らず太っているかやせてるかくらい判断すべきで、簡単な骨折でいちいちレントゲンを撮るようでは、人間の骨接ぎ(接骨医)以下であることを認識して頂かなければ困る(鳥に多大な迷惑をかけてレントゲンを撮っても、それをどう見て良いかもわからないような者まで存在する)。
 故高橋達志郎先生から引き継がれる、現実的な小鳥の臨床治療を基礎にした獣医さんが多くなってもらいたいのだが、なかなか難しいかもしれない。世の中ままならぬ

 中旬、一足早く換羽を終えたコウは、それを待ちかねたように産卵をはじめた。体が重そうで、巣材集めのようなこと(水拭き用のタオルやスポンジに執着する)をしていたのでまさかと思ったが、さっさと6個ほど産み貯めて、当然のように巣籠りをはじめた。それもまた大した巣籠りで、つぼ巣の奥底にこもって姿も見せず、巣に手を入れて引きずり出そうとしても動じない。
 同様に産卵・抱卵を止めないマルとミナ、ともにまったく元気そうなのは良いとして、真夏にも産み続けるつもりなのか、何とも気がかりなところだ。

 その他のおとなの文鳥たちは、順調に換羽している。オッキのハゲ頭は完全に修復され、元の姿に戻った。もう一羽のハゲ頭シマも換羽してきているので、元の姿に戻るのも時間の問題と思われる。
 病み上がりのヤッチも換羽で、少し神経質になっている。キタはまたずいぶんと貧相なボロボロ状態になって笑わせてくれるし、妻のゴンの換羽も盛大だ。

 盛大な換羽対策というわけでもないが、「文鳥団地」の下に敷いてあった古いカーペットを捨て、木目調の床シートに替えた。これなら水ぶきも出来て清潔だ。

2006・5

 上旬、ノロとコウの換羽がはじめまったのを受けて、カゴの丸洗いと、箱巣をつぼ巣に取り替える作業を順次進めていった。つぼ巣をセットした新しいカゴと交換し、交換したカゴを洗ってつぼ巣をセットして次に備える。1日2台ずつ進めていく。
 中旬、箱巣がつぼ巣になったのがきっかけとなったのか、繁殖から換羽モードに移行する者が増え、羽毛の飛散が盛大となってきた。特にオッキは、昨年換羽が不十分で前頭部がはげており、なおかつ軟卵を産んでいたので、早めにしっかりカンウして欲しかったが、そのハゲ部分から見事に筆毛が芽吹いてきたではないか!順調に伸びてくる筆毛を見て喜んでいたら、5月1日、一夜にして忽然とハゲ状態に戻ってしまっていた。どうやら、夫のゲンが気にして抜いてしまったようだ。「善意」なのだろうが、余計なことをしてくれる。
 下旬、「文鳥団地」を覆っていたビニールシートを撤去する。これで、飼育面の衣替えは完了だ。

 ノロ、コウに始まった換羽は、グリ、オマケ、シロ、オッキ、ゲン、モレ、シマで進行中だが、まだ繁殖を続けようとする者もいる。カン、マル、ミナの3羽だ。
 このうちミナは、春から産卵を始めたばかりだから仕方がない。夫のクラもお付き合いで換羽に入れないといった感じだが、文句は言えまい。マルは産卵と抱卵に情熱を燃やすタイプで、夫のグリが換羽中であっても関係ないらしいが、これも夫婦それぞれだから大目に見よう。
 しかし、カンの行動には問題がある。素直に換羽すれば良いものを、ポコッと1個だけ産卵し抱卵し始めた。そして、誰に似たのか抱卵へ情熱ならマルにも勝る年下の夫のハルに、半ば以上抱卵を押し付けるのだ。目の前で掃除機をかけられても巣を死守する彼は(カンは水を取り替えるだけでカゴから飛び出す)、クチバシの周りがはげて来たものの、換羽に移行出来ないでいる。換羽期を逸して、ハゲ頭にならないでもらいたいところだ。

 そのハルの息子のデコは、ヒナ換羽が終わり、ヒナの時に「デコポン」のようだったことなど微塵も感じさせない26gのシャープな体格をした美しい文鳥に変身を遂げた。ただし、目つきはとろんとしていて動きもどこか鈍くさい。
 体格や性格など、なぜか曽祖父のノロの影響が突然色濃く現れたように思えるが、実はこのモレ、ハル、デコと続く系統には、共通する外見的特徴があり、それは曽祖母のナツに由来している。何かといえば、アゴの部分がみな同じように白いのだ。桜文鳥のアゴの部分の羽色は、基本が黒でそれにところどころ白が混じり、場合によっては真っ白になったりすることが多いが、この系統の文鳥は4代にわたって、根元部分が真っ白で外円部が黒いタイプで、正面から見ると半月形に見える点で共通している。
 曽祖父母の影響を受けたデコだが、オリジナリティも発揮してくれている。さえずりだ。ブレイ流のヤッチに師事し、その真似に終わるかと思われたが、ブレイ流にノロ流を組み込んだ何とも複雑なさえずりを完成させようとしているのだ。

 デコの不思議なさえずりを聞きながら、のんきに5月を迎えた途端に変事が起きた。
 思えば、1日、手のひら水浴びが日課のヤッチがそれをしなかったのが前兆であった。その時は、いよいよ換羽になるのだろうと軽く考えて気にしなかったが、翌2日の放鳥時、クチバシが若干チアノーゼ(クチバシが青みを帯びる)気味で、動きに精彩がなくなっているのに気が付いて、事態は重大化した。
 とりあえず、これは細菌性腸炎ではないかと素人診断をする。換羽の始まりによる免疫力の低下時に、寒暖の差(10度以上の気温差があった)とつぼ巣破壊という趣味(古いつぼ巣を1週間で崩壊させていた)といった条件が重なり、何らかの細菌が体内で増殖したものと思ったのだ。
 この時点で、翌3日午前中に病院に連れて行く判断をすべきだった。しかし、その3日午前中、市販の医薬品(トモジン=ネオ)を探すことで空費した。この薬はサルファ剤なので、私の憶測が正しければ効果があるものと思われたのだ。ところが、動物用医薬品の販売規制が強化されたものか(薬事法により医師や薬剤師以外は特別な許可がない限り販売できない)、以前見かけたお店のどこにも置いていなかった。
 購入できずにがっかりして帰ると、ヤッチは春の暖かな陽気の中で、嫌な感じに羽毛をふくらませ丸くなって眠っている。いよいよ不安となり、ただちに病院で抗生剤でももらわねばならないと思ったが、あいにくゴールデンウィークで、普通の動物病院は午後休診なのだった。そこで栄養剤(各種サプリメントを水に溶かしハチミツで割ったもの)を点滴したが、その際体温が低くなっていて、もはや危篤状態になりつつあると認識しないわけにはいかなくなった。
 夜の放鳥時、しんどそうだが湯漬けエサを食べに出てくる。やわらかいので食べやすいのだろう。ひとしきり一粒ずつ噛み砕いて食べると手の上に止まり、こちらを見てからカゴに帰っていく。何と健気な態度と言わねばなるまい。とにかく保温器を2つカゴのまわりに掛けて、翌日の通院の準備をする。トモジン=ネオは通販で頼んだが、もはやそれを待ってはいられない。
 翌朝、いちおう事前に休診ではないことを電話で確認して、タクシーで連れて行く(820円)。ヤッチは病気のくせに落ち着かず、カゴに指を入れると、強烈に噛み付いてきた。この元気があれば、まだ大丈夫だろう。
 久しぶりの動物病院は、犬猫数人の後で順番となった。獣医さんにカゴから引っ張り出されたヤッチは、「ギャー!」と雄たけびを上げ、飼い主の私は、手乗りではないのかと尋ねられた。
 「ベタベタの手乗りです…」
 人見知りが激しい箱入り息子文鳥なのだ。
 かなり痩せてきていて、右下腹部のすい臓部分が赤く腫れていると視認を求められる。確かに赤く腫れている。痩せているのは胸筋を見なくてもわかっていたが、いつもながら小鳥の急速な変化には驚かされるばかりだ。獣医さんはカゴの底に落ちたフンを顕微鏡で見た上で、食べ物は未消化ですい臓が腫れていて原因は不明と説明され、薬を乳鉢でゴリゴリと砕き始めた。そして、その薬を耳掻き一杯ほど小さな点滴容器に入れ、シロップ状の液体を15滴入れて混ぜ合わせ、ヤッチのクチバシ横に点滴して見せてくれた。
 10日分薬を頂く(1日3回1回5滴、1日分を件の方法でつくる)。1500円。タクシーで帰る(900円)。タクシーでの往復料金の方が高くつくのは、どうにも腑に落ちないところだ。
 戻ったヤッチは元の鳥カゴに戻す(飲み水に混ぜるタイプの薬を処方されたり、同居鳥が邪魔であったり、感染の危険のある病気でなければ、特に環境を替える必要は無いと考えている。なお、獣医さんに「隔離した方が良いですか?」とか「放鳥して良いですか?」などといった余計なことは絶対に訊かない。看護は飼い主である自分の責任において行う)。丸まって眠っていて、特に回復の様子は無い。昼過ぎに点薬し、すだれ越しに様子をうかがっていたが、食欲が出てきたようで、エサ箱に入り込んで食べ始めた(食べやすいようにエサ箱のフタは取ってある)。安心して用事を済ませて夕方に見に行くと、落ち窪んでいた目に生気が戻っていた。実にわかりやすい文鳥でありがたい。
 放鳥時間も飛びずらそうだが(衝突落下するので危ない)、明らかに元気になっている。まだまだ若いから、このまま順調に回復してくれるだろう。

2006・4

 何となくオスの気配を漂わせていたデコは、生後3ヶ月を経過してようやくぐぜり始めた。これによって、キューとデコをカップルとする計画は、あっさりと破綻した。
 この際、ヒナ換羽中で迷彩柄のデコには、ブレイ系以外のさえずりをしてくれることを期待し、口笛でヘイスケ流を聞かせもしたが、月末になりヤッチに師事し、ブレイ流を継承しようとの気配が濃厚になっている。さらなる挫折、世の中ままならぬ。
 そもそも我が家生まれのオスは、一羽残らずすべてブレイ流でさえずる。実に恐るべき伝播力を有するさえずりと言えよう。ブレイの存命中は、みな彼に師事した。グリ・ガブ・ゲンは付きまとっていたし、オマケは途中で養子に出したにもかかわらず、脳裏に焼き付けてブレイ流を真似した。
 中でも、腫瘍を患った晩年のブレイから、孫の孫であるゲンが直接教えを受けたのが大きかったように思える。そのゲンに付きまとったヤッチがブレイ流を継承、彼の声量はブレイをもしのぐものがあり、弟分のハルや息子のキューの心をとらえ今日に至っている 。
 もしブレイの逝去が早かったら、ゲンはグリやオマケからブレイ流をならっただろうか?グリやオマケは曲調こそブレイ流だが、声量が小さい。声量で言えば、ノロやキタの方がよほどインパクトがあるから、違った展開があったかもしれない。
 とりあえず、ヤッチと言う中興の祖を得て、ブレイ流のさえずりは安泰のようだ。

 2月加入したミナは、あっさり我が家に溶け込み、ヒナ換羽を終えた下旬には、当然のように産卵を始めた。抱卵もきちんとする。幼い顔をしているが大したものだ。
 一方1月に加入しノロと生活しているコウは、夫婦そろって一足早く換羽に入り、みすぼらしい姿となっている。
 なお、さらにその少し先輩であるマルは、相変わらず巣籠りをして滅多に出てこない。今年加入の嫁文鳥たちは、三者三様だ。

 わりに3月は平穏に過ぎてくれた。繁殖期の最終盤を無事に乗り切ってもらえば、次は盛大な換羽が始まるはずだ。
 昨年来クチバシの根元から禿あがっているオッキとシマが、綺麗な姿に戻ってくれることを期待したい。

2006・3

 オマケ、シロ、クラの不思議な三角関係が続いていた。シロは夫のオマケとの関係も良好で、抱卵も日中はしっかりとやっている気配だが、放鳥時にはクラといちゃつくばかりで「家庭」を忘れてしまう。シロがしっかり抱卵していても、わざわざクラが誘い出しに行き、旦那のオマケを追い出す。こr¥のままでは、クラが箱巣にまで侵入して居座り、オマケが放逐されてしまうかもしれない。
 それだけなら笑って済まそうかと考えたが、1月下旬に6個、さらに2月上旬に9個と、シロの産卵数が尋常ではなく、危機感を感じざるを得ない。不思議な現象だが、2羽のオスの卵を産んでいるように見なせそうだ。これを放置しこの産卵ペースが春まで続けば、その衰弱は必至であろう。
 我が家にやって来て2週間足らずでマルがグリの卵を産んでいたので、一羽だけ孵化させ、その子がメスならクラと・・・。などと考えていたが、そのような悠長なことも言っていられない。せっかく腕にも平気で乗るようになったシロを衰弱の危機から救うため、グリの子孫計画を断念し、11日、クラの嫁候補購入作戦を再び発令した。

 今回も、クラの好みとしては白でもゴマ塩でも桜でも良いはずで、前回同様の理由(オマケの動向と『桜文鳥保護法』)で桜文鳥を探すことにする。しかし、もし気 に入った白文鳥がいればそれでも良いことにする。むしろ一番望ましいのはゴマ塩で、先月マルを買ったお店にいたメスらしきゴマ塩が思い浮かぶ。しかし、なるべく違う店で買うことにしているので、今度は南方のお店を主眼に探すことにする。
 まず徒歩圏内(と言っても30分以上かかる)のみなとみらい地区にあるホームセンターへ行き、いなければ桜木町から根岸線(京浜東北線)を南下し港南台、そこでもいなければバスにでも乗って金沢八景、それでもダメなら京急で引き返しつつ杉田や井土ヶ谷と計画する(地元の人にしかわかるまい)。

 『みなとみらい』などと言っているが、たんなる埋立地で、こんなところに未来があるのか私は知らないが、ホームセンターがあって4000円未満で文鳥が売られているのは知っている。そしてここ数ヶ月にわたって売れ残っている桜のメスは・・・、やはりまだいた。尻尾が無いが、一時より元気そうだ。3ヶ月もあれば綺麗になるように思うが、クラの嫁は喫緊の課題なので、今これを救い出すゆとりはない。
 一緒のカゴに入っていた体格が良い白文鳥のメスは売れたらしい。代わりに、クチバシがピンクで顔に筆毛が残り、背中に若干灰色の羽毛のある、頭が小さくかわいらしい白文鳥がいる。その白文鳥は、すでにボロボロも極まった感のあるつぼ巣をせっせと破壊している。心ひかれるものがあるが、これはどう見ても昨秋生まれの子で、今すぐにオスと同居させるには適さないように思える。次に向かう。

 港南台駅から普通ならバスに乗るのだろうが、テクテクと坂道を歩いていく。ずいぶん不便に思える場所にホームセンターがあり、その地下に充実したペットショップがあるから意外だ。
 鳥のコーナーはかなり暖房がきついが、せまい中に珍しい鳥が展示されているので、これは必要な処置と言える。そして、何と珍しいことに、桜文鳥が5羽もいるではないか!メス5200円と、値段は少々高いがしっかり表示されている。文鳥たちを見ると、小柄な2羽に脚輪がある。赤とオレンジ。しげしげ眺め、品定めする。
 脚輪のある2羽、1羽はほとんど胸にぼかしがなく、1羽はぼかしが多めだ。同性のはずだが仲が良く、ぼかしの多い方が主導権を握っている。どちらもひきしまった顔つき、小さくて良い姿をしているが、買うならぼかしのあるほうだ。姿勢が良く態度が堂々としている。一方の脚輪のないグループ、やや顔が間延びし、これも同性のはずだが2羽はどう見てもカップルだ。あぶれている1羽は、ぼかしがないがそこそこだ。
 他の鳥やグッズを見ながら、この後行く予定のお店での可能性をいろいろ考え、脚輪がある方がメスなら、ぼかしのやや多いオレンジを購入し、もし脚輪無しがメスなら次のお店に行くことにする。
 水の入れ替えをしている店員のおねえちゃんに、脚輪がついている方がメスか尋ねる。果たしてそうだと答えるので、心中快哉を叫びつつ、件のぼかしの多い方、オレンジの脚羽の方を所望する。後ろにいた店主と思しき物腰の柔らかなおじさんが、荒鳥で良いのかと丁寧にお尋ねになるので、一切承知の旨答える。先ほどのおねえちゃんが先にホームセンターのレジで会計するように、「ペットが家に来た日」と題された一文が書かれ、5200円の値札が貼ってある紙切れをくれたので、そのようにする。こんなことが書いてある。
 『動物が家に来た日は、できるだけ構わないで下さい。動物は、環境の急変で大変なストレスを受けています。さわったりのぞいたりして余計な負担をかけず(以下略)』
 至極もっともな話だ。
 会計を済ませて戻ると、「オレンジ」は小さなカゴに入っており、おじさんが脚も問題なくお尻もきれいだと解説してくれた。確かにその通りに見える。メスかオスかは業者も悩むという話もでたので、「万一の時は替えてもらえますよね」、といちおう念を押しておく。もちろん遠慮なく言ってください、と実に丁寧なごあいさつであった。実に良く出来たお店だ。

 例の小さなボール紙に入った「オレンジ」をカバンにしまい、わき目もふらずに帰途につく。それでも家まで1時間半かかってしまった。
 「オレンジ」は『コウ』と呼ぶことにした。もちろん港南だからだ。
 家に着くと、まず脚輪を除去し、風切り羽を3枚ずつ間引き切りする。体重はボール紙込みで45g、ボール紙が23gなので22gと言うことになる。実に小柄でかわいらしいではないか。

 数日隔離の後、コウをクラのカゴに入れる。しばらく一羽で寂しかったコウは喜んでいるが、クラは迷惑そうで時折威嚇している。夜の放鳥時、コウはクラの後ろを付いて回るが、クラはシロといちゃつくばかりだ。
 これではどうしようもないので、即刻飼い主の強権を発動、クラとコウを捕獲し、2羽を入れたカゴを隔離部屋に移した。他の文鳥と隔離し、両者の仲が良くなることをねらったのだ。
 数日後、特に仲が良くなる様子も無かったが、クラとコウのカゴを「文鳥団地」に戻す。夜の放鳥時、クラは何の反省もなくシロと不倫を続け、コウは・・・カゴから出てこない。つぼ巣に入って満足しきっている。どうやら、クラがつぼ巣に近づくことを許さなかったので、それに入りたくて仕方がなかったようだ。かわいそうではないか!腹が立ったので、クラをその場からただちに「遠流(おんる)」に処す、つまり一羽だけ隔離部屋に移す。
 さらに数日後、クラを「文鳥団地」に戻してやる。いちおうコウのいるカゴに入れてみるが、ちょっと威嚇音を出したので、即座にコウは隣カゴに移した。クラのいない間、コウは放鳥時間にものびのび飛び回り、隣カゴの独身オス、ノロと仲良くなっていたので、すでにそちらとの同居を考えていたのだ。
 しかし「遠流」をしても、文鳥であるクラに罪意識は当然ながら皆無で、相変わらず旦那の目の前で間男を演じて恥じるところが無い。人間で無い以上廉恥心を求めるのはお門違いだが、このままで良いはずもない。そこで、25日、第三次クラの嫁候補購入作戦を発令することにした。

 二度の失敗によって、今現在のクラが桜文鳥に興味を示さないのがわかった(もともと妻は桜だったのに!)。しかし、色柄よりもシロという文鳥が好きなのかもしれない。そうなると、オマケにシロをあきらめさせ、新たなメスとカップリングする以外にないので、やはり相手は白文鳥が無難だろう。
 ビール券を換金した費用を手に、みなとみらい地区のホームセンターに行く。
 相変わらずみすぼらしいメス桜は売れ残っており、それと同居しているメス白は、数週間で背中の灰色は取れ、クチバシも赤みが差しているが、どうやら先日の幼い文鳥のようだ。
 まだヒナ換羽が終わらないようなメスが、カップリングの相手となってくれるのか、少し考える。しかし、クラの本来の妻であるセーヤなどは、ヒナ換羽の序盤からオス(ケイ)を追い掛け回していたし、その父のオマケなど年上の女房ばかりであったのに、生後一年未満と思われたシロに求愛している。どうなるかわからないことで悩んでも仕方がないので、頭もクチバシが小さくかわいらしい顔つきのその白文鳥を買うことにした。何しろ、間男のボンクラや寝取られ亭主のために探しまわるのはうんざりなのだ。第一、この店は安い(3937円)。
 近くで掃除していた店員のオネエちゃんに、さっさと購入の意思を告げる。この店はオスとメスで値段が変わらないこともあり、念のためオスの場合交換してくれるとの言質を取っておく。

 白文鳥の入ったボール紙の小箱をカバンにしまい、家に帰る道すがら名前を考える。そして、買った場所からいけばミナかミラだが、ミラはクラと紛らわしいので、『ミナ』にすることにした。

 数日の隔離を経て、ミナを「文鳥団地」に移動させる。斜め下に済むオマケはミナに気づくとソワソワし、箱巣で抱卵中のシロを確認に行っている。別の鳥だとは思っていないようだ。
 夜、放鳥。案外オマケはミナに興味を示さず、クラが接近していった。どうやら白文鳥のメスなら何でも良かったようだ。初めての状況に戸惑う時に、頼もしげな者が親切に近づいてくれば、嫌がるひねくれものは少ない。あっさりと、ミナはクラのことが好きになり、早速仲良く行動をともにし始めた。その間30分、あっさりとクラとのペアリングが成功したのだった。

 ミナは幼いわりに破棄が強いようで、クラにシロが接近することを許さず、おかげでシロは放鳥中遊びまわることなく、途中で抱卵に戻るようになった(ただし自分では帰れず、飼い主に捕獲されるのを待つ)。
 結局、みんなカップルになり、めでたしめでたしとは言うものの、総数20羽となってしまった。それでも、デコがメスでキューとカップルになれば、一羽くらいなら誕生させても良いかもしれない。しかし、キューがメスとは、生後3ヶ月現在でも確信がもてない。何しろのんびりした文鳥なので、成長が遅いだけのような気がして仕方が無いのだ。さて、どんなものだろう。

2006・2
 アニファの飼育本が改訂されたのでその批評と、同時期に目にしたつぼ巣否定論への反論、などを加えました。文句ばかり言って人格を疑われそうですが、参考になれば良いかと思います。

 年が改まっても不幸が続いた。
 11日、初めて産んだ有精卵の抱卵に失敗し、次の産卵中であったセーユが、気づいた時にはカゴの底で冷たくなっていた。もともとお産の重い文鳥で、2日前の夜にかなり調子が悪くなり半ば覚悟はしていたが、翌朝には持ち直しホッとしたのもつかの間の逝去であった。確認すると、お腹というより総排泄口の手前に6個目になる卵が残っていた。つまったと言うより、産卵そのもので力尽きてしまったのかもしれない。推定年齢6歳。かわいそうなことをした。
 今にして思えば、前回有精卵があったのも、抱卵を途中でやめてしまったのも、セーユではいまだかつて無いことであった。不思議なものだ。
 2日前に危険を感じた際、セーユの卵を産卵周期の重なるモレたちの元に托卵していたが、これはいつものように無精卵であった。何とも残念なことが多い。

 さて、昨年のソウ、ナツに続き、大食漢で顔が大きく目の綺麗なセーユがいなくなったことで、3羽の独身オスが残されることになった。さらに子供2羽のうちキューはオス、もしデコもオスとなると、オスメスのバランスがいちじるしく均衡を欠いてしまう。
 さらに、オマケとシロの家庭を破壊しかねないクラの付きまとい行為は、いっこうに止む気配が見られない。気は進まないが、とりあえず応急的にクラの嫁は迎えた方が良さそうだ。ヒナがいる状況で外部から文鳥を迎えるのは、感染症の危険から極力避けたかったが、デコも問題なく生後2ヶ月に達しようとしているので、下旬、メス文鳥購入作戦を発令した。
 目的、クラによるオマケとシロの家庭破壊を防ぐ。目標、桜文鳥のメス(容姿にこだわらない)の購入。

 クラは白斑が多くても(亡妻セーヤ)、色が濃くても(亡き同居鳥ソウ)、真っ白でも(今のおもい鳥シロ)構わないらしいので、色柄にこだわる必要はない。しかし、ここで白文鳥を増やすと、白いのが好きなオマケがどういった行動をとるか読めず、また我が家の『桜文鳥保護法』の観点から、将来も繁殖に用いられない可能性が高い白文鳥を増やすべきではないように思える。そこで、目標は桜文鳥に限定するものの、あまり選り好みせず、健康そうな桜のメスなら何でも良いことにする。つまり、売っていれば買うのみだ。
 さて、確実に売っているのはどこだろうか・・・。みなとみらい地区のホームセンターにだいぶ前から明らかに病気のメスが売れ残っているが、これを救い出すゆとりは無い。こういった時に頼りになった吉田橋の小鳥屋さんは昨年閉店、その本店筋のお店は最近なぜかリクガメが店内をうろついている始末で、あまり近づきたくない。
 この際、少々遠征するとすれば、まず頭に浮かぶのが、昔キタを買った大型ペットショップ、ヨネヤマプランテイションだ。しかしこのガーデニングが本業のチェーン店は、センター北以外の店舗で小鳥の生体販売から撤退しつつある。この方針は合理的な経営判断と客観的には認めつつも、個人的な主観の上では気に食わないので、そこの売上にはなるべく貢献したくない。この際南下して、金沢八景の昔ケイを買った小鳥屋さんに行こうかと考えたが、ここは桜のメスがいない可能性がかなりある。
 そこで東急東横線を北上し、以前感触の良かったお店のある新子安に向かった。

 この私鉄の各停しか止まらぬロートルな駅の近辺に、なぜか2軒も小鳥屋がある。まず北側のお店の様子をうかがう。
 例年以上に寒いのに、外のカゴに2羽と3羽に分かれて桜文鳥がいる。上段の身を寄せ合っている2羽は容姿も様子も、グリとセーユを思わせる。下段はゴマ塩柄2、細い桜1。店内には桜文鳥メス4500円との表示があるものの姿は見えない。つがいで14000円というシルバーの片方がつぼ巣から顔を出しているが、その隣に同じようにつぼ巣の入ったカゴが2台ある。文鳥がいそうな気配だが、営巣中で確認出来ない。とりあえず次へ行く。
 南側のお店。夏に見たゴマ塩文鳥ながら頬黒気味なので、頭全体がゴマ塩柄の文鳥が売れ残っている。実に珍奇だが、これはオスに見える。他に桜が2羽、ゴマ塩が1羽。客と話しているいかにも鳥屋といった風情のジイさんに、桜文鳥のメスはいるか尋ねる。ジイさんは件の全身ゴマ塩文鳥をつかみ出したりしていたが(模様が悪いので売れないようなことをブツブツ言っていたようだ。滅多に見れない柄なのにもったいない!)、ずいぶんあっさりとみんなオスだと言う。本当かどうか怪しいものだが、こだわるまでもないので北側の店に戻る。
 電話をしているオバさんに近づくと、電話を切って応対してきたので、桜文鳥のメスが欲しい旨はっきりと伝える。オバさんは、オスはいるのか、とか、文鳥は見合いさせるの何のかんの言うので、複数オスがいるので心配ないとボソボソ答える(この日はしゃべるのが億劫だったのである)。ついでに20年以上の飼育歴があとか、10羽以上も飼っていることをボソボソ伝えておく。ペットショップの能書きなど、今さら聞きたくないからだ。
 オバさんは外にいる文鳥たちを物色し始めたので、その様子をかなりの不安とともに見つめていた。何しろ見た目で判断する危うさを嫌と言うほど知っている。すでに3回別々の店で性別違いの交換を強いられているのだから、もうたくさんだろう。
 グリ・セーユもどきの「セーユ」をつかんで確認してから離し、今度は「グリ」をつかんだので、「セーユ」の方がメスに見えていた私は、「そっちのはオスというジャッジですか?」と尋ねると「いいえそれはメス」とあっさり言う。メスならそれで良いではないかと思ったが、何か意図があるのだろうと黙っている。オバさんは計3羽(「グリ」とゴマ塩と細身)を店内の照明で顔を確認してから竹カゴに入れてくれた。何がしたいのか良くわからないので、「見た目じゃわかんないよね」と言ってみる。オバさんは「メスには目の周りに切れ込みがある」と言ったので、それは『化石時代の迷信だ!!』と心中叫びつつ、言下にボソボソ否定した。「そんなんじゃわかんないよね・・・」
 容姿では何とも言えないが、3羽相互の関係を見ると、グリの横に他の2羽が行きたがり、それでもさほど大喧嘩にならない。これは「グリ」以外はメスの三角関係ではないだろうか。しかし、そんなことで性別は確定出来るはずも無い。ところで、外のはメスではなかったのかと改めて尋ねる。すると、外のはみんなメスで上段の文鳥、つまり「セーユ」は卵を産んだことがあると言うではないか!それならメスで決定だ。「では、それを下さい」と言う。どうやら、オバさんは一所懸命オスを探していたらしい。
 勘違いに気づいて、これもメスだと店内のカゴを指す。さきほど巣の中にもぐりこんでいたのは、一方は白文鳥のペア、一方は白と白斑の多い桜ペアだった。その桜もなかなか魅力的な姿をしているが、相手の白文鳥はさらに素晴らしい。大きな目と赤くはっきりしたアイリング、なかなかいそうでいない美男子だ。せっかく美男美女で営巣しているのに、他にも候補がいるのに仲を引き裂くような野暮はしたくない。「グリ」の方はモテモテのようだから、「セーユ」がいなくなっても困りはしないだろう。
 そうこうする内に店主のオジさんも現れて、「セーユ」をつかんで連れてきた。そして照明で顔を確認し(アイリングを一所懸命見ているわけだ・・・)、そして・・・「ばらして」しまった。手の中から抜け出し、バサバサと飛び出してしまったのだ。ぞっとしたが、元気はあっても飛び慣れないので、オジさんが網であっさり捕獲して事なきを得た。
 「セーユ」をつかんだオジさんから、指に欠損が無いことの確認を求められたが、指など1、2本無くても気にしないので、適当に相づちを打つのみでろくに見ない。危ないから、さっさとボール紙に入れたほうが良いと思っているのだ。
 会計4500円。面倒なので何も言わなかったが、疑り深い私は、それでもオスの可能性もあると考え、レシートはしっかり保管することにする。

 「セーユ」の入ったボール箱を、使い捨てカイロが貼ってあるカバンの中に入れ、電車に揺られながら、名前を『マル』にすることに決めた。この名前はゴンの兄姉の幼名にあったが、買ったお店の在所を連想するにはマルしかあるまい。

 家に帰ると、少し爪を切り、両翼3本の風切り羽を一枚おきに切る。放鳥の際の危険防止のためだ。切らないとスピードが出すぎて危ない場合があるが(お店の鳥は飛行経験が無いので無茶をする)、切りすぎると飛べなくなってしまうので、この程度が経験上ちょうど良い。
 すでに用意していたカゴに放り込む。パニックになる様子も無い。さっそく隔離部屋に移動しカゴに自作の『簡易温室化装置』をかぶせる。ヒナの温室にも使っていたものだ。上面にヒーターがついているので、屋外環境にいた文鳥には極楽だろう。台の上に乗せ、目の前に座ってじっと観察する。
 セーユに似ているが人間的な目(つまり私の趣味)で見た器量は劣る。目が小ぶりでほっぺたが出ているのだ。体格はやや大ぶりでオスと言われればそんな気もする雰囲気だ。フンは異常なし。かゆがる様子も無い・・・。
 マルはジロジロ見られながら平然と小松菜を食べはじめた。肝が太い。悪く言えばあつかましい。数日間身の縮むような様子で隔離生活を送っていたシロとは雲泥の差だ。写真を撮ってみる。フラッシュにも驚かずアワ玉を食べ始めた。末頼もしい限りだ。

 このマルはクラとペアにするつもりで買ってきたが、寒風の中で身を寄せ合っていたのはグリに似た白羽の多い桜文鳥だった。となれば、グリに親近感を抱くことは大いにありえる。グリもセーユの面影を感じれば、黙ってはいないのではあるまいか。
 そうなったらそれでも良いかもしれない。婿のクラより我が子のグリを優先させるのは、あけすけな飼い主の差別意識の上で当然のことであった。数日隔離して様子を見てから、クラと同居させようと思っていたが、最初は放鳥で顔見せし、どういった反応が起きるか確かめことにした。文鳥の自由意志、集団見合いだ。
 ・・・結果、予想は見事なまでに的中した。
 マルはお店で産卵していただけあって、繁殖する気満々であるに違いない。一目見るや我が家の若者たち(ゲン・ヤッチ・ハル)が騒然となり、次々に襲い掛かる。有り体に言えば交尾をせまるのだ。飛び慣れず危険な上に襲われるので、心配しつつ見ていたが(いちおうカゴに帰すのだが『自由意志』で出てくる)、しばらくすると少し落ち着いてきたので、耳をそばだてつつも目を離して水の交換などをして戻ると、なぜかグリとマルが部屋の隅のつぼ巣に一緒に入っている。若者たちの間隙をついてグリが誘い、マルが応じたのだろう。
 こうなってしまえば、2羽の仲を引き裂く必要などないのだ!その夜からマルはグリのカゴで同居させ、翌朝からはすっかり新婚夫婦であった。カゴではベタベタ、放鳥時間もベタベタ。・・・うっとうしい。
 マルの放鳥2日目に、シロに夢中でマルに無関心だったクラを、3日目に全くマルとは関係の無いサイを、なぜかグリは徹底的に追いかけ叩きのめしていたが、これが他のオスへの見せしめでもあったのか、まるで空気を読まない若造のハルが執拗に付けねらっている以外は、マルに近づくものはいなくなった。
 7歳のグリ、張りきり過ぎではないのか?カゴのブランコにサーフィン乗りしつつさえずっている。マルは天秤棒を天空に突き出すように尾羽を上に向けプルプル震わせている。まるで野球の打者のような派手な交尾姿勢。グリがさえずりつつ交尾。交尾後には怒ったように突付きあう。7歳、大丈夫だろうか。心配ではあるが、お好きなように・・・。

 しかし、これでは作戦目的が未達成のままだ。シロは夫と愛ジンの両方分の卵を産んでいる気配があり、はなはだ危険と言える。さらにメスの導入が必要か、しかし、そうなると一羽だけ独身となるノロがかわいそうな気もしてくる。さてどうしたものか・・・。

2006・1

 不幸が続いた。
 初代ヘイスケの後妻としてソウを生み、ノロの妻としてモレを生んだナツが、12月16日に急逝した。箱巣の産座にたたずんだままの姿勢であった。推定8歳。昨年から産卵はせず、前夜もさほど変わり無く、遺体に異常な点は見られなかった。
 非手乗りながら、気が向けば手のひらで水浴びをし、名前を呼べば返事をし、ヘイスケ流さえずりの口笛をするとのどを鳴らす、電気ポットの上が好きなちょっと間抜けな面のある憎めない文鳥だった。安らかに。

 そのナツの娘ソウの孫の孫のキューは元気に成長し、手のひらで眠るのが好きな甘えん坊で、中旬を過ぎる頃にはぐぜり始めるようになった。オスだったのだ。
 一方、ナツの娘モレの孫となるヒナも、親鳥(カン・ハル)が見事に責任を果たし、飼い主が引き継いでからも、体重は26g程度で一定ながら順調に成長してくれている。当初はクチバシの中央に一筋のピンク色部分があり、両親とは異なり白羽が多くなるかと思われたが、時とともに真っ黒となった。結局羽毛が生えそろってみれば、片翼の雨覆いに白羽が見られるのみだ。また引き継いだ当初、頭の形がかんきつ類のデコポンのようだったので、名前を『デコ』としたが、成長するにつれて凛々しい顔立ちとなった。
 このデコも年明けには飛行も始め、夜の放鳥デビューも果たしたが、それ以外の時間でもひんぱんにキューと遊ばしている。オスであれば親友に、メスなら夫婦になってもらいたいからだが、そういった思惑など知らないキューは、デコの羽毛をむしり取り追いかけ回している。
 この2羽は性格がかなり違う。キューは甘えん坊であまり冒険的なことをせず、初飛行もおとなしく、あまり遠くへ飛んでいかず、幼い頃から手の中で眠るのを好んだ。一方のデコは初飛行から無鉄砲で、すき間を縫うようにしてテレビの裏に落ちて飼い主を狼狽させ、その後もいろいろなところに果敢に飛んでいき、飼い主の近くよりおとなの文鳥たちのカゴをのぞくことを好む。
 しかし、今のところ両者ともに手のひら大好きの『握り文鳥』だ。デコは当初手のひらで眠ろうとしなかったので、意識的に手のひらに入れる時間をとっていたら、すっかり甘えるようになった(寒さも一因か)。ついでに犬のように尻尾を左右に振る癖があるのがかわいらしい。ともあれ、左手にデコ、右手にキュー、この至福にして何も出来ない状態が長く続いて欲しいものだ。

 下旬には、グリとセーユの卵の孵化を期待していた。この夫婦は二世誕生が望まれながら、3年ほど無精卵を産み続け、すっかりあきらめていたら、今回に限って3個ほど有精卵があったのだ。これは全く想定外で、鳥数制限の上では困るのだが、この機会は逃せない。1個擬卵に換えず孵化を待った。
 この夫婦はヤッチの養父母を務めた経験があるので、成功の確率は高いと思われた。しかし予定日を過ぎても孵化せず、予定日の2日後には抱卵をはっきりと止めてしまった。卵は孵化直前で中止卵となってしまっていたようだ。その理由は不明だが、卵を選んだのは飼い主自身であり、止むを得ないところだ。また機会があれば、頑張ってもらおう。

 ところで、ソウ、ナツの逝去に伴い、オスの独身者が2羽出現してしまった。このうちノロの方は非手乗りのくせに同性の飼い主に恋愛感情を持っており、肩に止まりトロンと怪しい目でさえずってくれている。つまり、独身でも特に問題ない。ところが、まだ3歳でバツ2となったクラには問題がある。
 ソウに先立たれ、セーヤを失ったとき同様に寂しげにしていたが、次の女房をシロにする事に勝手に決めてしまい、付きまとって色目を使い、シロの夫であるオマケを撃退してしまったのだ。口は達者だがケンカは弱い男であるオマケは、放鳥時間に自分の妻に近づくことも出来なくなった。
 この異常事態を収拾するために、クラの嫁が必要ではないかと考えたが、結局実行しなかった。理由は、シロにはオマケを捨ててクラと駆け落ちする気が無く、今のところクラも押しかけて徹底的にオマケを駆逐する様子は無いこと、感染症持込の防止のため、ヒナのいる今、外部から文鳥を迎え入れるのは極力避けたかったこと、さらにグリとセーユの二世誕生の可能性があり、それがメスとなりクラと夫婦とする未来もあり得ると考えたからだ。
 非力なオマケが嫉妬に狂う様子も無いので、しばらくこのままでいようと思う。

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