新井邦宏さんの信用取引実践バイブルに学ぶ

新井邦宏さんの相場哲学

　本書は信用取引の解説書ですが、同時に新井邦宏さんの相場哲学書とも言えるものです。
　非常に中身が濃い本であり、信用取引のルールや仕組みの解説に留まることなく、買い方と売り方との勢力バランスが相場動向に及ぼす影響や心理分析に及んでいます。最低限「はじめに」と「あとがき」を読むだけでもそれなりの教訓が得られます。

「はじめに」からの教訓
・信用取引を使って、当初の思惑通りに相場が展開すれば、大きな利益を享受することができます。しかし、その思惑と反対方向に相場が動けば、大きな損失を被ることにもなるのです。
→信用取引では最大で担保の約３倍まで取引出来ることに注目されがちです。レバレッジを掛け過ぎると、正常な判断が出来なくなります。

・株式相場で生き残るためには、如何に損失を少なくするかが重要になります。損失は自分で管理できる範囲内に押さえ込まねばならないのです。
→毎年多数の方が株式投資に参入しますが、２～３年後に投資資金を温存していて投資を継続出来る方は少ないようです。利益を出すことは重要ですが、取り返しが付かない様な大きな損失を出さないことが、更に重要です。

・株式投資に負けはつきものです。ですから、最初から負けたときのことを考えて投資すべきです。
→株式投資を始めた当初は売買すること自体に興奮してしまいがちです。銘柄研究や買い出動のタイミングに大変気を使いますが、手仕舞うタイミングを決めていないことが散見されます。仕切りから手仕舞いまでを一連のシナリオとして考えておく必要があります。

「あとがき」からの教訓
・株式投資の目的は、自分の資産を増やすことであり、何も投資を楽しむものではありません。また、常に売買をすることでもなく、より確実なタイミングを計ってやるべきものです。

・信用取引を行っている投資家は、買いからでも売りからでも売買できるはずなのに、これだけ大きな下落トレンドが出ているにもかかわらず、損失が拡大しているのはどうしたことでしょうか？それは、やはり、相場のトレンドを認識していないからでしょう。

・人間１０万円の損切りはできても、１０００万円、１億円の損切りはできないものです。それが正常な人間心理です。ですから、負けが大きくなる前に損切らないと、最後は大きなマイナスを出して、収拾がつかなくなるのです。

本書の特徴

　信用取引を始めるにあたっては、委託保証金率、信用金利、逆日歩、担保価値、追証、決済の方法など、信用取引の仕組み、用語の意味を基礎知識として知る必要があります。 本書の知識編ではこれらの基礎知識を網羅しています。

　信用取引で実際に利益を上げるには基礎知識だけでは足りなくて、売買のノウハウが必要です。 本書のノウハウ編では、信用買い残の増減、信用売り残の増減、信用倍率の変化、ブル(買い方)及びベア(売り方)の勢力の変化を見ながらポジションを持つ方法、考え方について、チャートを多用して詳しく解説してあります。

　株式相場は現物取引だけでなく、信用取引の買い方、売り方の需給バランスに大きく影響を受けるので、仮に現物取引しかしない方にとっても本書は十分に役立つ内容です。 また、信用取引でやってはいけないこと、リスクについて詳しく述べられており、有益です。

　短期売買で資金を効率良く運用したい方、空売りでリスクをヘッジしたい方、上げ相場でも下げ相場でも利益を上げたい方は本書を参考にして信用取引を活用することをお勧めします。

著者

新井邦宏

出版社

投資レーダー

目次

Ⅰ．実践信用取引　ノウハウ編
　Ｃｈａｐｔｅｒ１　信用取引の極意
　Ｃｈａｐｔｅｒ２　実践・信用取引
Ⅱ．実践信用取引　知識編
　Ｃｈａｐｔｅｒ３　信用取引の仕組み