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ということでつづきだが、じつは超電導には大きく分けて2種類あるのだ。 名前で言うと、第1種超電導と第2種超電導という言い方になる。 このことを説明するために、マイスナー効果という現象を説明せねばなるまい。
マイスナー効果という言葉を聞いて超電導体が浮いている場面を思い浮かべる人がいるかもしれないが、あれは磁石の上であった事を覚えているだろうか。 つまり、磁場というものに関係しているのだ。 磁場は磁石の強さを表すものだと考えればいいでしょう。 ぼくらの身の回りにあるほとんどの物質は、反磁性体(水やほとんどの有機物質)か強磁性体(鉄みたいに磁石につくもの)である。 だが、超電導状態にある物質は完全反磁性といって、物質の中に磁場をまったく入れない状態なのである。 イメージを描くとこんな感じ。(矢印は磁束線を表す)
これを見てわかるように磁場が超電導体を持ち上げているのだ。 当然、磁場(磁石)が強力なほど高く浮く。 しかし磁場を強くしていくと、ある強さで磁場が侵入し始め、超電導状態でなくなってしまう。
ここで、自然の理として“エネルギーは低い方が安定”というルールがある。 たとえば、空中に物を固定できないのはなぜか? それは高いところにあるより地面の上にある方が位置エネルギーが低いからである。 あらゆる物質は常に安定しようとする。 エネルギーの低い方へ行こうとする。 このルールにより、超電導体は磁場が入ってこない方がエネルギーが低い、つまり安定なのである。 だが、ある磁場以上は侵入させた方が安定、つまり常伝導状態に戻った方が安定なのである。 これが第1種超電導体。(ちなみに、超電導体が超電導状態である方が安定なのは温度に関係している。)
これに対し第2種はというと、磁場を強くしていくと一気に常伝導に戻るのではなく、少しづつ磁場を侵入させ、徐々に常伝導に戻るのである。 つまり超電導体内に、超電導の部分と常伝導の部分が混じっているのである。 この混合状態のおかげで、ちょっとやそっとの磁場では(全体としては)超電導状態が壊れないで済むのだ。ゆえに第2種の方が実用向き。 というのは、第1種が耐えられる磁場はせいぜい100ガウス程度。 ピップエレキバンの10分の1の磁場に耐えられるかどうかもあやしい。 だが第2種は、磁場が入り始めるのは第1種よりもはやいが完全に常伝導に戻るのは1000000ガウスぐらい。1万倍だ。 そして超電導になる温度だが、第1種は高くとも10[K]くらいだが第2種は100[K]くらいだ。 このため第2種は高温超電導(−260℃に比べれば−190℃なんて十分温度が高い)とも言われる、つーかこっちの方が一般的な言い方。
それにしても、これは重要である。第1種のを超電導状態にしようとするとマイナス260℃以下まで冷やさなければならない。 絶対零度はまぢか。 液体ヘリウムが4.2[K]なんで、冷やすことは出来る。 しかし、ヘリウムは空気中にはわずかでアメリカでないと取れないらしくバカ高いのだ。 だが、100[K]であれば液体窒素が使える。 こいつの温度は77[K]。 窒素なら空気中から無尽蔵に取れる。 もっとも、液体窒素は液体酸素をつくる時のおまけとして出来るもので、本来は捨ててしまうようなものなので非常に安い。 実用面から言ってもコスト削減という重大なことである。
参考のため、第2種も図に示しておくとこんな感じ。
以上、説明したように2種類の超電導がある。 ここでようやく前回の続きだが、BCS理論が適用できるのは第1種の方だけなのである。 というのは、この理論が成り立つのは極低温でのことで、第2種のように高温では通用しないのだ。
まぁしかし、理屈がわからなくてもそれが有用であれば使ってしまうのである、人間は。
次回はみじかくします、スンマセン。
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