其ノ伍

 さぁ、お待ちかねの応用へのお話です。 前回、話したように超電導には大きな電流が流せるのです。 となるとやはり、磁場が関係してくるわけですが、この磁場が超電導の一番の見せどころといった感じです。

 たとえば、通常の電磁石は銅線を用いていて、大きな電力を消費しつつも発熱して溶けてしまわないように制御しながら磁場を発生させます。 したがって、安全に磁場を発生させられるのは1[T] (=10000[G]) 程度。それ以上となるとエラく高価になるでしょう。 しかし、超電導線を用いてつくると7〜8[T]ぐらいはいくようです。 いちおう抵抗が無いので消費電力にムダが出ないはずなんだが、超電導を維持するために真空ポンプや冷却器といった周辺機器が必要になるので消費電力はさして変わらない。  それにしたって、発生させられる磁場が強くなったのだからこれで良いのです。  現在、ぼくの知る最高記録はたしか20[T]くらい。東北大かなんかの人達がつくったらしい。 ただ、その磁場を発生させるには町ひとつ分の電力が必要らしく、とても実用的とは言えません。 ちなみに上述した超電導の電磁石はすでに実用化されていて、様々なところで使われています。

 では、この強力な電磁石を利用した応用にはどのようなものがあるのか。 わかりやすいとこから言えば、リニアモーターカー。 (リニアについては誰でも聞いた事があると思うが、勘違いしている人が多いと思うんでそのうち解説します。) じつは、ずいぶん前から耳にするこのリニアもまだ研究中なのです。 あと最近、新聞の記事で見たがアオコを採るのに利用できるらしい。 湖などの中に磁性粉をまくと、それとからみあったアオコが粉ともども強力な磁石に吸いとられきれいな水が残る、という仕組みらしい。 しかし、大幅な清浄化にはならないそうなので油断して汚さないように。

 さて、超電導の他の使い道だが、磁気センサーというものがある。 これは、感知した磁気がどのくらいの大きさかを知るためのものである。 これに超電導を用いると従来とは比べ物にならないくらい感度が良くなるのである。 つまり、非常に小さな信号まで感知できるのである。

 これもかなり有用である。 有名、といっても理系じゃないと知らないと思うがSQUIDと呼ばれる実験装置がある(ちなみに、ぼくがメインで使っている装置です)。 あとはMRI。医療方面では重要な役割を果たしている。 しかし、これらの装置は1台、数千万円〜1億円という値段なので、誰でも買えるというわけじゃないのが残念。 このMRIも今はまだ大きな病院にしかないでしょう。 ただ、その効果は絶大なのです。早期ガンの発見などに大いに役立つ事でしょう。

 † SQUID: 超電導量子干渉計 (Superconducting Quantum Interference Devices)

 ‡ MRI: 磁気断層撮影装置 (Magnetic Resonance Imaging)  

 ほかにも、通信機器やコンピューター素子などへの応用が考えられています。


前のが気になる

直訴 公訴

頭が痛い

つづく