堂田「信長に対しても意見ができる?しかし濃姫とやらは資料にも現れてないんで生駒の娘より早く死んだんじゃないかとかも言われてますよね?信長に意見ができるような立場にあったかどうかはわからないじゃないですか?」
浪子「北の政所の立居振舞というのは見事なものだ。おそらくお手本があった。そのお手本が濃姫なんじゃなかったのかな?と思うんだよ。」
堂田「子供が居ない戦国大名の正室の手本かぁ。そういえば北の政所は秀吉の出世には貢献してますが豊臣「家」の天下の継続っていうものには執着が薄いようですね。」
浪子「そうだろう。これも自分に子がいないからじゃないのかな?」
堂田「自分の子がいないから、豊臣政権がどうでもよかったのかな。関が原の時には豊臣の家内の采配は秀頼の生母が主導してたでしょうしね。」
浪子「どうでも良くはないだろうが、北の政所にとっては清正や正則、三成らが息子みたいなもんだろう。夫のいない豊臣家政権の今後よりも育てた子供でもある彼らが今後も身が立つように考えてたんだろうね。ある意味、政権を残すことに重点を置いていた北条正子より母性が強いのかもしれないね。」
堂田「そういえば、北の政所あてに信長が送った手紙に「正妻なんだからどしっと構えてせこいきもちをもたないようにしなさい」という文面があったそうですね。」
浪子「正妻なんだから。。。からか。なるほど、信長は「正室」という立場に立つ女性はこうあるべきだと思ってた何よりの証拠だね。そういう正室を彼も持ってたんだろう。もしかするとこの文面は濃姫と一緒に考えた文面かもしれないね。」
堂田「お手本か。安土殿とよばれる女性が本当に濃姫だとすると。。。。」
浪子「信忠を廃して、信雄を立てるという話が光秀と濃姫の間にあった。という可能性もでてくる。」
堂田「でも、斎藤利三の私怨のためその計画はパー。」
浪子「計画通りに事が進む方が稀なんだよ。その失敗を取り返すだけの政治力、信用が光秀には備わってなかったんだよ。まあ本心はどうあれ謀叛なんていう形で権力を手に入れると余程の軍事力を単独で有してないと誰もついてこないっていうことだね。謀叛だと思わせない事後工作が必要なんだよ。」
堂田「で、濃姫はそんな陰謀を墓場までもっていった。その後は。。。。。」
浪子「真相は信雄が握り続けた。信雄にとってもこの一代の大芝居が失敗したことがばれるのはまずかったろうからね。正室である濃姫が資料から抜け落ちてるのは、信雄が腐心してその痕跡を抹消したんじゃないかな。本能寺の変直後の公家の日記などを見ても改ざんされてる節もあるようだしな。信雄による事後工作じやないか。これから想像するに信雄はなかなかの政治力、根回し力を持っていたと思う。結果的に家康や秀吉に天下をさらわれたから、両者に利用されたお人よしのように見えるが、信雄が天下を奪ったという結果となったと仮定した場合、家康と秀吉と勝家という旧織田軍三大勢力を手玉にとって瓦解させた男として、歴史に名を残したかもしれないよ。安土殿の面倒を最後まで見たのも信雄だしね。信雄にとって実母と同じような存在だったんだろうね。」
堂田「ついでに一つきいていいですか?本能寺の変がなかったらどうなってたと思います?天下統一は成ったと思いますか?」
浪子「またバーチャル史論かい?本能寺の変がないというのは光秀がずっと信長の思い通りに生きつづけて死ぬという仮定かい?」
堂田「そうです。それまで通り光秀が能力を信長のために使って。。。」
浪子「天下統一は成ったんだろうねぇ。一応。ただ信長政権が長続きするとは思えないけどね。それに統一完了は信忠政権の仕事になったろうね。秀吉の天下統一より時間もかかったんじゃないかな?」
堂田「えええっ?柴田戦や家康との戦いもなくなるんだから早くなるんじゃ?」
浪子「その代わり、毛利をはじめ九州や四国を舞台にした西国勢力との殲滅戦が始まるんだろう?絶対にそっちの方が時間がかかる。」
堂田「そうかなぁ。」
浪子「秀吉が本能寺の変から10年やそこらで天下を統一できたのは、「毛利懐柔」のおかげだよ。毛利と殲滅戦なんてはじめてしまうと、四国や九州の大名たちも自分たちも同じ目に会うと思って秀吉の九州征伐や四国征伐より却って時間がかかるはずだよ。まあ西国に対しても同じやり方を続けるかどうかはわからないがね。」
堂田「朝鮮出兵は?」
浪子「もし、殲滅戦を続けて天下統一したんなら朝鮮出兵の意味は半分はなくなるだろう?」
堂田「へ?」
浪子「だってそうだろう?秀吉は大大名たちを減らさないで豊臣政権を膨張型の政権にしたいという野望もあったからね。天下統一が終わったら列島外に目を向けるしか新しい領土はないわけだから、列島からはみ出していくのは当然だよ。信長が大大名をどんどん減らしていく方策をとったら別に新しい領土は必要なくなる。実際徳川幕府は取り潰しや改易による緊縮型をとって天下統一を磐石なものに仕上げたろう?」
堂田「そうかなぁ。秀吉の政策は信長の踏襲だという話だから朝鮮出兵もやったんじゃないかな。」
浪子「人間にはね、寿命があれば健康問題も精神的問題もある。何時までも信長が天下布武の志に燃えていた頃の信長のままではないだろうからね。秀吉の晩年がいい例だろう?」
堂田「そんなものですかね。。。信長は戦国時代随一の天才大名だから、天下統一も早くなりそうな気もするんですが。。。信長は朝鮮出兵しなかったと考えてるわけですね。僕なんかはしたような気がしてなりませんがね。老いには勝てないかぁ。。。」
浪子「日本の天下統一が早く終わった場合、ただし1582年より前に完全に平定できていればの話だが、それならやったかもしれないよ。」
堂田「若けりゃって言うことですね。」
浪子「まあ、そうだね。でも君は朝鮮・朝鮮というが、それは手段であって目的じゃないことを知っているか?」
堂田「朝鮮の支配が目的じゃない?」
浪子「そうだよ。秀吉の例を見てもわかるが、『唐入り』っていってるだろう。朝鮮半島は通り道にすぎないのさ。秀吉の出兵の場合は唐入りが目的だ。」
堂田「そういえばそうですね。唐入りだ。でも秀吉の場合はって言いましたよね?信長の場合は違うんですか?」
浪子「おそらくね。信長の目的は唐入りじゃ終わらない。天竺入りだろうね。まあ軍隊を引き連れて行くかどうかは知らないがね。」
堂田「天竺??三蔵法師じゃないんですから!」
浪子「いいところに気がついたね。」
堂田「はぁ?」
浪子「信長は知的好奇心と信仰というものを確かめる意味もあって仏教誕生の地インドを見てみたかったんじゃないかなと思ってる。」
堂田「まさか!」
浪子「信長は決して仏教や神道を嘘っぱちとして認めなかったわけではない。それにかこつけてる阿漕な宗教者やそれをいい気にさせてしまってる愚かな大衆を断罪したわけだ。」
堂田「まあ、そうともいえるかもしれないですけど。。。天竺だなんて。。。」
浪子「本当の仏教を直接もってきてやろうと思ってたのかもしれないよ。その場合、秀吉は猿だから孫悟空だよ。沙悟浄は光秀。」
堂田「猿はともかく、光秀は河童とは呼ばれてないでしょう?」
浪子「河童なんて想像上の化け物だからもともとどんな姿をしてたかなんてわからないだろう?あの形になったのは江戸時代の事、西遊記には沙悟浄が河童だなんて書かれてないよ。それに河童は日本で生まれた化け物だ。信長の時代にはまだ河童の格好じゃなくって人間それも坊主の格好をしていたのさ。坊主といえば、はげ頭。光秀に信長がつけたあだ名のキンカ頭ってのははげ頭のことなんだろう?となると沙悟浄は光秀できまりだろう。猪八戒は女に弱そうな勝家か。そうなると信長は当然、三蔵法師だ。」
堂田「何を馬鹿な事いってるんですか!」
浪子「はははっ、まあ冗談だが、ありえないともいえないだろう?キリスト教の事を信長の時代にはね『南蛮宗』とか『天竺宗』と呼んでいたんだ。天竺って所は当時の日本人にとって極楽、天国に一番近いところなんだよ。そして世界の一番西の果てでもある。信長だって最初は宣教師たちをインドから来たと思い込んでたらしいしね。四人で天竺まで旅するつもりがあったかもしれない。というかね、信長はそうしてもいいような時間を作るつもりだった。つまり近い内に天下人を止めるつもりだったんだよ。信長は本能寺の変がなくても近々に完全に隠居したんじゃないか?その様子が見て取れたから、光秀も信長の隠居の拒否、信忠政権誕生阻止のために動いたという気もするんだよな。きっと光秀は信長に引退なんてしてほしくなかったんだよ。二代目経営者に創業者時代からの重役がついて行きたくないのは今も昔も同じなんだよ。」
堂田「完全なる隠居ですか?そういえば、信濃の平定後に「天下の儀」つまり天下人の地位も信忠に与えると言ったと信長公記にも載ってるらしいけど・・・・・。」
浪子「だってそうだろう?織田家の家督はとっくに譲ってる。毛利と対峙している秀吉は信長の出馬を願っているのにも関わらず自分は動かずに信忠を差し向けようとしている。本能寺にも物見遊山程度の人数で大した兵を連れてない。朝廷から勧められた官職も断って、代わりに信忠に任官させてほしいなんていってる。人間五十年だよ?自分がトップのまま戦う気はなかったんじゃないのか?俺が信長ならそうするね。だってそろそろ遊びたいじゃないか?濃姫や側室や歳のいった家臣を連れ立てて物見遊山でもして余生を過ごしたくなってきたんだよ。きっと。人間五十年というのは命の儚さだけでなく、50になったら生まれ変わってやるなんて意味もこめて歌ってたんだよ。信長は50を過ぎた自分が君臨する天下なんて想像もしてなかったんじゃないか?生きたまま斬った張ったの下天のうちから卒業する気だったんだよ。老衰で死ぬまで戦い続けるなんて賢い人間なら選ばないと思うよ。」
堂田「うーん。。。楽隠居の信長。イメージわかないなぁ。」
浪子「天才は天才を知るだよ。君は凡人、私は天才。凡夫たる君のイメージなんて私たち天才からみるとどうでもいいことなんだ。どう考えても私には、天才の私の方が天才の信長の心情を理解できる可能性が高いと思うんだがな。天才同士だから。それに信長は茶道のみならず、囲碁や将棋なんかも奨励している。きっとこういった事を隠居後の自分の居場所にしようと思っていたんだろう。大山のぶ代も高齢を理由にドラえもんの声を引退するんだ。信長が隠居したいと思ったっておかしくないだろう?」
堂田「はいはいわかりました。天才先生。大山のぶ代の話はどうでもいいけど。。。先生の場合、天才より天災の方が似合いそうだけどな。」
浪子「「天災」という漢字を覚えたばかりの小学生でも言わないような駄洒落だな。別に私は君に辞めてもらってもかまわないんだけどね。」
堂田「いやいや、辞めるなんてとんでもない、、、、そうだ囲碁といえば、本能寺の変の前夜、その本能寺で信長が後世、碁の大家になる初代本因坊と林家初代に対局させたそうです。でそのときの棋譜が『三劫』になったとか。三劫っていうのは珍しいかたちで、その形になってしまったことで、囲碁の対局はお開きになって、夜に帰った本因坊たちは難を逃れたという話もあります。」
浪子「うん、話をごまかすつもりかい?まあ、いいだろう。やっぱ囲碁だね。囲碁でもして気楽に余生を過ごすつもりだったんじゃないか?天才信長は、きっと君みたいな凡人のように権力にしがみつきたいなんて思ってなかったんだよ。やりたい事が天下統一だったから天下統一しようと思った。やりたい事が他にできれば何時までも天下統一なんてことにこだわってなかったんじゃないかな。他にもいろんな趣味を持ってたしね。」
堂田「趣味は確かに多かったですよね。でも信忠が舞の道具を揃えて遊んでいたのを見つけたときには、どうも怒ったらしく道具を没収したりしている。この時一時的に親子不和になり、本能寺の変の多々ある黒幕説の中に信忠黒幕説もあります。実はこの親子不和が原因で信忠が本能寺の信長を襲い、殺した。その動きを察知した光秀が信忠討伐に動いたと考える人も居るようですよ。」
浪子「確か信長は信忠の遊び道具を没収してその代わりに俊馬なんて送っている。そこまでの不和じゃないんじゃないか?それにその説の通りならそれを記した明智の書状とか残りそうなものだしね。明智はあちこちに書状を送りつけまくっているんだからさ。単純に若いくせに余裕をもって遊んでいる信忠に信長が嫉妬したんだよ。能なんて舞ってる暇があるんなら、馬に乗って戦えってね。」
堂田「信長だって「人間五十年」って若い頃から舞ってたんでしょ?」
浪子「舞うことの意味が違うんだろう。信長が若い頃は自分が五十まで生きられるかどうか不安もあったんだろう。五十年しか生きられない儚さじゃなく、五十までは生きたいという希望をこめて舞っていたのかもしれないよ。」
堂田「そう言われれば。。。信長が信忠の年齢のころには尾張の国の支配権をめぐって戦三昧ですもんね。桶狭間とかもこの年ごろですよね。ということはやっぱり『もっと働け』と息子に対して思ってたのかな?で、親を安心させてくれよと。。。。仏教界を震撼させた第六天の魔王も人の親だったのか。」
浪子「信長が父と死に別れたのは18の時だ。で織田家当主となっている。当時はまだ小さな領主といえども孤独だったろうね。その時、父信秀の年齢は41。信長が信忠に織田家の家督を譲ったのも41。父信秀が亡くなったのと同じ年齢なんだ。これは偶然じゃないような気がする。」
堂田「ええっ!じゃあ。。。信長は自分と同じように信忠が成長してくれるように願ってたのかな。」
浪子「そして人間五十年だ。その歳までに天下人としての全ての権限を信忠に譲るつもりだったんじゃないか。」
堂田「そう聞かされると信長という人は年齢ということに凄いこだわりをもっていたんじゃないか?と感じさせられますね。人間五十年かぁ。第六天魔王は何を考えていたんでしょうね。」
浪子「本能寺の変が起こらなくて信長が長生きしていたとしたら、一年以内に『完全に隠居してる』。これが私の答えだ。ところで第六天の魔王って何の事だか知ってるのか?」
堂田「仏教の邪魔をする魔王でしょ?一向門徒や叡山の僧侶たちが仏教の敵という意味で呼んでいたんですよね。」
浪子「違うよ、これはまだ信長が若い頃から自称していたはずだ。ということは信長は若い頃から五十を過ぎたら楽隠居をすることを目的に世の中を動かしていたのかもしれないな。『第六天』というのは別名、『他化自在天』って言ってね、他人のものでも自分のものの様に使うことができて、好きなことを気ままにして楽に暮らせる天界の事、その天界の王の事だよ。そこの王ってことなんだから自分の邪魔はさせないけども他人の邪魔はするよ。って事だね。第六天は「欲」の天界の最上位の世界だからね。ずっとそこに暮らす分にはいいところだが、仏道修行の途中にあるものにとっては欲を刺激する邪魔なものでもある。だからそこに住み着いてるような輩を魔王と呼ぶのだよ。元々はインドのシヴァ神のことだしね。」
堂田「シヴァ神?」
浪子「そうだよ。シヴァは「マハーカーラ」とも言われるインドの神様だ。マハーカーラは日本では神話の大国主命と同じ神様だと言われていた。七福神でいうと大黒さまだよ。」
堂田「ええっ!大黒様と第六天の魔王が繋がるとは思いませんでしたよ。」
浪子「信長は「第六天の魔王」の呼び名が気に入ってらしいね。第六天の世界はまさに『楽隠居』じゃないか。五十を過ぎたら生きながらにして第六天に転生するつもりだったんだよ。信長の天下っていうのは信長にとっての第六天を地上に演出することだったんだよ。現世で第六天のような暮らしができるんなら別に日本列島全部を支配する必要もない。自分にとっての第六天だけ確保すればよかったんだ。逆に列島を支配しても第六天が得られなければ海の向こうにも進出したかもしれないがね。完全なる天下統一なんて信長は最初から完成させるつもりはなかったのかもしれないよ。
堂田「そりゃ当人の心の中までは解らないですしねぇ。でも今後の事っていうかその後の政治方針も考えていたっぽいじゃないですか?日向の守や筑前の守っていうのは将来的にというか天下統一が完成してから光秀と秀吉に任せようとしていた国名じゃないかといわれていますよね。」
浪子「さあ、それはどうかな。官位とかは直接の支配地を示さないのが当時の常識だろう?私から見れば『石見・出雲』に『日向の守』である光秀を送り込もうとしていた。っていう方が断然気になるけどね。」
堂田「そうそう。そういう話もありました。そうなら完全なる隠居なんて考えていなかったんじゃ?」
浪子「それは早計だよ。私が気になるのは「出雲」という土地だ。国譲りの土地じゃないか?」
堂田「はぁ?神話ですか?高天原とかという?それとどういう関係が。。。」
浪子「君にもらった日本書紀と古事記の訳文を読ませてもらった限りの話だが、国譲り神話では、タケミカヅチにフツヌシという高天原最強の武勇神が大黒様いや大国主に国譲りを迫ったということになっている。光秀と秀吉はね、信長にとって、天照大神にとってのタケミカヅチとフツヌシのような存在なんだよ。その二人に国譲りをさせた天照大神は結局地上には降臨しない。主役はここから天照大神の孫つまり天孫に移り変わるんだよ。主役の居る場所こそ舞台であって現実世界だ。ここで天照大神は地上世界への直接介入を止めてしまうんだ。天孫の側からみれば天照大神は国譲りで引退したとの同じなんだよ。国を譲りで引退というと大国主の尊とかタケミナカタとか地上の神のことばかり言われてるようだが、天照大神も同時に引退しているわけだ。そして何より、天孫が降臨されるありがたい土地は日向なんだろう?呪術とか儀式とかいうものは先例をなぞることだ。天下が統一されたという証を列島全域に広めるため、その最後の仕上げに天下統一の先例である『天孫降臨』をなぞろうとしたんだよ。」
堂田「日本の建国神話をなぞろうとしてる???それと同じことを信長も考えていたと??」
浪子「そのために出雲に最も信用していた光秀を送るつもりだったのさ。おかしいかい?対毛利戦争の内容によっては、毛利家は武田家亡き後の諏訪に転封になってかもしれないね。信長はこの前言ったように無神論者でも完全なる合理主義者でもない。寧ろ秘匿されたオカルトの世界が大好きだったんじゃないか?だから年齢にもこだわったし、宗論も好きだった。あっそうそう、年齢といえば一つ面白い偶然がある。日本史の大転換期を作り出した二人の天才、織田信長と聖徳太子はね、同じ「壬午」の年に亡くなってるんだ。ほら、ここにも午(うま)がでてきた。なかなか面白い偶然だとは思わないかい?馬のオカルトだね。」
堂田「オカルト好きな信長かぁ。」
浪子「オカルトっていうのは隠秘学とも言う。有名なのは錬金術や魔術だね。日本風でいうと陰陽学だ。科学の世の中からみるとこれらオカルトは妙な趣味だが、それも現代人の考え方だ。流行っていた当時に大真面目にやっていた人たちからみれば、これは正しい学問なんだ。今風にいえば「最先端の科学」だよ。」
堂田「そういわれれば。。。ヒトラーもオカルトが好きだったようですしね。独裁者っぽいのはそういうのがいいのかな。」
浪子「だろう。信長は天下統一を進めるその裏で、隠居に向けての準備を着々と進めてたってわけさ。神話をなぞるってことはもしかして、光秀が進言したことかもしれないよ。その進言通りに呪術が進んでいたのに、信長がそれを途中で放棄して引退すると言い出したことで両者に亀裂ができた。実際、後の家康と天海は「東照大権現」として神話を再現してるからね。天海は光秀から天下統一の仕上げとして神話をなぞる呪術をしようとしていたことを聞いていたのかもしれないね。天海が主導して建立したとされる日光東照宮の明智紋、延暦寺の石塔なんていうのは、天海が光秀に支払った著作権料みたいなものだったかもしれないよ。信長は神話をなぞる統一事業を進める一方で、光秀が延暦寺をすてられなかったように自分の信仰を捨てられなかった。」
堂田「信長の信仰って?」
浪子「牛頭天王信仰、つまりスサノヲに対する信仰だよ。代表的なのは京都の八坂神社だ。この神社の神紋と織田信長の家紋は同じ「木瓜」なんだ。信長はこの信仰に対しては青年期から一貫して信仰しているように見えるからね。桶狭間の時の熱田参り、上洛時の牛頭天王社の保護、そして頻繁に行っていた馬ぞろえ。「牛頭天王」は「午頭天王」とも書くから牛の神だけではなく、午つまり馬の神様でもある。スサノヲも馬に縁のある神話を持っているしね。自分をスサノヲの生まれ変わりだとか自分の守護神はスサノヲだと信長は自分の中で信じていたんじゃないかな。私にはそう思えてしかたないよ。スサノヲを信奉している自分がアマテラスもどきを演じることは認められなかったんじやないか?」
堂田「それにアマテラスは女神ですしね。」
浪子「あっ!女神かぁ。。。まさか光秀は濃姫を天下人にしたかったとか。。。。。。」
堂田「いくら何でも。そこまでは・・・。光秀は濃姫の従兄弟だっていう話もありますけど。。。。。」
浪子「そうだよな。いくら何でもそこまではないか。。。あっ!!でも凄く気になる事を思い出してしまった。」
堂田「それは?」
浪子「織田家の後継者を決める清洲会議に濃姫が参加してないんだよ。秀吉の方針、つまり三法師を後継にするという作戦を認めたくなかったのかもしれないな。もしくは秀吉も濃姫−信雄−光秀の連携を感づいていたのか。。。。何か裏がありそうだな。。。まあ考えすぎかな。」
堂田「本能寺の変の目的は信長の隠居を食い止める事と信忠の殺害で、信長の死は斎藤利三の暴走によるアクシデント、信忠の代わりに信雄を立てる、というのを実行できていたとしたにら政変劇は成功してたかもというのが先生の説なわけですね。短くまとめてみるとトンデモない話だなぁ。で名将明智光秀の策謀なら、『是非も無し』と諦めたか・・・。」
浪子「是非も無しってのは、そういう意味じゃないんじゃないか。『神仏は私の作ろうとしているこの世の第六天をやっぱり認めてくれないんだな。信奉するスサノヲやシヴァ神のように根の国や天界に行かなくては隠居生活は楽しめないのか。しょうがない。』という意味だよ。」
堂田「強引にきましたね。光秀の仕業と知っての言葉なんですから。。。しかし先生、隠居、隠居って。。先生も実は楽隠居したいんですか?でも先生は楽隠居できるほど稼ぎがないので無理ですね。」
浪子「結局、お金の話になるのね・・・・・・・・・・・・・」
堂田「お寺に関わる話だけにカネの話はツキモノです。」
幕
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