ほとんど突発的に起こると思われているクモ膜下出血であるが、実際に病気を体験してみると、それなりに前兆のようなものがあったような気がする。
ただし、これは『今になって考えてみると・・・』と言った類のものであり、僕の単なる主観なので、あくまで参考程度に止めていただきたい。


半年程前に原因不明の片頭痛・・・

 発病の半年程前に右の側頭部からコメカミに掛けて2ヶ月間に渡り酷い片頭痛に襲われた。片頭痛が始まる前に顔面に冷や汗が出始め、眼が奥の方から痛み始めてやがて猛烈な片頭痛が襲ってくる。その痛みといったら、大げさではなく頭を抱えて転げまわりたくなるほどで、特に目が飛び出すのではないかと思うほど目の奥が痛んだ。ただ、頭痛薬を飲んでしばらくすると治まった。僕は8歳の時に脳波や眼底検査、脳血管の造影剤検査等を受けたほど、子供の頃からの筋金入りの頭痛持ちであり、こと頭痛に関しては持病と考えて鈍感になっていた面があったのだが、それにしてもこの時の痛みは尋常ではなかったため、さすがの僕も総合病院に行き、CTスキャンと眼圧の検査を受けた。

ところが検査の結果は異常なし。仕事がコンピュータ関係という事もあり画面の見過ぎによる眼性疲労が根本的な原因だろうという事になってしまった。しかし、この時の片頭痛の痛みはとてもそんな事が原因と思えるようなレベルのものではなく、僕はその結論に納得していなかったのだが、それからしばらくして嘘のように痛みが治まってしまい、またその頃はMRI、MRAといった脳血管撮影検査の存在を知らなかったため、CTスキャンの結果に異常がなかったという事実に安心してしまい、脳神経外科の専門病院へ行くなどの追従検査を行わなかった。

総合病院の批判をするわけではないが、頭痛の検査をするならばやはり専門の脳神経外科病院で行うべきだと思う。
子供の頃から頭痛持ちだった僕の感想として専門病院以外の場合、CTスキャン、眼圧検査、脳波測定などの検査の結果に異常がなければ(その時点での出血、脳波異常など・・)、どうも『頭痛』というものに対して軽視されがちな面があるような気がする。『頭痛という持病』という概念がいまだにあるような気がしてならない。

「何かおかしい」と思った場合、専門病院でCTスキャン、MRI,MRAなどにより徹底的に検査をするべきだと思う。

【追記】
その後、くも膜下出血体験から4年後に、今度は左の側頭部からコメカミに掛けて、まったく同じ痛みの症状が突然発生し、脳神経外科の専門病院で検査した結果、くも膜下出血の再発に繋がる病巣は見つからず、『群発性片頭痛』と診断された。その症例を読んでみると、まさにそのままである。総合病院で診断されたような眼性疲労ではなかったわけだ。

【群発性片頭痛について】
痛みが非常に激しく、頭痛発作は2年に1回から毎年1、2回という人が多い。一般には男性に多く、女性の5倍の発症率と言われる。痛くなるのは、いつも決まった片側 で、目の奥をえぐられるようなその痛みは、頭痛の王様と言って良いほど強烈で、じっとしていられないほどである。
一度発作が起こると、1ヶ月から2ヶ月の間は連日痛みが起こり、痛みの持続は20分〜3時間程度で、やがて自然に治まる。発作の時間帯は比較的深夜が多い。
その後数ヶ月から数年間、痛みが現れない潜伏期のあるのが特徴。

群発頭痛のメカニズムについては、まだ明らかになっていない部分が多いのだが、「目の奥にある太い内頸動脈の炎症を起こす物質が作用して拡張するのだろう」と考えられている。
群発頭痛を誘発する因子はアルコール・狭心症の治療薬のニトログリセリン・お風呂・疲労・ストレス・睡眠不足などが一般的に上げられるが確実ではない。

僕が群発性片頭痛発病時に服用している薬
片頭痛薬
テラナス5を朝夕1錠、痛み止めインダシス25mgを頭痛時1錠、安定剤ルボックス25就寝前1錠、緊張緩和剤デバス0.5を就寝前1錠

MRAとは
MRIとは
共鳴振動(ソナーのような仕組み)により短時間で脳血管の状態を調べる検査。
MRAが脳血管の検査なのに対して、脳自体の状態を調べる検査。CTより詳細な映像が得られる。

 素人の意見ではあるが、群発性片頭痛とくも膜下出血の双方を経験した者として、群発性片頭痛を発病し、その異常な痛みから重篤な病気を心配する方は、CT、MR検査IよりもMRA検査を、脳神経外科の専門病院で受けるべきだと僕は思っている。群発性片頭痛と脳血管疾患の因果関係はないというのが現在の定説ではあるが、人によっては群発性片頭痛が、脳血管障害等の何らかのサインになっているの場合もあるのではないか・・・というのが、両方の病気を体験した僕の正直な感想である。

CTおよびMRI検査は、その時現在の脳出血の状態を調べるものである。この検査で異常が発見されれば、それはすでに群発性片頭痛ではなく、脳出血、脳梗塞等の重篤な病気を発病しているわけである。これに対し、MRA検査は脳血管の状態を映し出す事により、動脈瘤など、今後、脳血管障害に発展する可能性の状態を確認する事が出来る検査なのである。したがって、この検査によって、脳血管に異常が認められなければ、多少なりとも群発性片頭痛に対する不安が解消されるのではないかと僕は思っている。


発病の2日前に突然酷い花粉症のような症状に・・

 発病の2日前、富士高原にいた僕は突然鼻がムズムズし始めたかと思うと、クシャミが止まらなくなった。自分でも「いったいどうしたんだ?」と思うほどの酷さで、夜眠る事も出来ない程だった。それまで花粉症を発病したことがなかった僕は山にいたこともあり、「ついに自分も花粉症になったか」という程度の軽い気持ちで、山からの帰りに薬局で鼻炎の薬を買って使用してみたのだが、ほとんど効き目はなかった。しかしこの症状も1日で嘘のようにピタリとおさまった。

ここでひとつ注意しておきたいのは、薬局で手に入れる事が出来る鼻炎用の点鼻薬である。薬の注意書きにも書いてあるが、高血圧や心臓病等の病歴がある人(もちろん脳出血も)は、この薬を使うべきではない。この薬は鼻炎を抑えるために、毛細血管を収縮させる働きがあるため、これらの病歴、あるいは危険因子を持つ人にとって血管への負担が大きすぎるからだ。

この時、僕は鼻のムズムズ感とクシャミがあまりに酷かったため、この薬を大量に使用してしまったのである。

発病の前日から右側頭部に攣ったような痛み・・・

 発病の前日、右の肩から首の付け根、そして右のコメカミにかけて突然攣ったような痛みが起こった。けっして強い痛みではなく、どちらかというと寝違えたような感じで、僕は筋をちがえたのかと思い、自分で首筋をマッサージしたりしていた。ただ不思議なことに頭痛薬を飲んでもその痛みはまったくおさまらず「なんだかおかしい」という不安な気持ちになった。この痛みは結局、発病の瞬間まで続いた。

このような特殊な頭の痛み方はくも膜下出血の予兆のひとつらしく、回復後の診察で、入院した病院の医師からも「首筋が攣ったような痛みはあったか?」と確認された。





 これらの事が直接、クモ膜下出血の発病につながっているのかどうかは僕には判らない。しかし、『いつもと違ういろいろの事が自分の身体に起きていた』ことは確かである。自分の身体に起こるべく大きなピンチに対して、自分自身がサインというか信号のようなものを発していたのではないだろうか。自分が経験して思うことだが、特に今までに体験した事のないような頭痛、痛み止めを飲んでも改善しないような首筋からこめかみに掛けての攣ったような痛みは、動脈瘤が原因のくも膜下出血発病に対する大きなサインのひとつのように思えてならない。


なんにしても「いつもと違うぞ」と思ったら、総合病院ではなく、迷わず脳神経外科の専門病院で検査を受けた方が良いと思う。




闘病記インデックスへ

クモ膜下出血とは  クモ膜下出血の前兆  闘病記その1  闘病記その2 脳神経疾患の特徴的な症状 
復活の山(金時山) そして再び北アルプスへ 闘病生活系譜
くも膜下出血を体験して