過去のノート
2005・12
 ヒナに与えるエサについて『文鳥問題』にまとめました。また、文鳥も飼い主も新世代の活躍が期待されるホームページ『文鳥の私生活』とリンクいたしました。

 当初エサをねだる音が聞こえず、サイが完全巣篭もりしているため頻繁に様子をうかがうことも出来ず、その成長が危惧されたが、9代目となるヒナは順調に成長し、一週間を経過すると鳴き声も聞こえるようになった。そして孵化16日目に予定通り引継ぎ、餌付けを開始した。
 ヒナの引継ぎ時、居座るサイを強制退去させると、ヒナの他に新たな卵が2個確認された。驚いたことに、サイは子育て中に次の産卵・抱卵もこなそうとしていたようだ。それでもヒナがいなくなれば、数日は巣篭もりをやめてのんびりしてくれるはずと思っていたのだが、彼女は違っていた。ヒナがいなくなったのも知らずに、何とか自分のカゴを探して帰ったサイは(彼女は捕獲されてカゴに帰っていたので、自分のカゴがどこなのか良くわかっていなかった。ヒナを収容した後、遊んでもらおうと考えて帰さずに放っておいた)、さっさと箱巣に入り、当然しばらくしたらまた出てくるだろうとの予想に反し、何事もなかったように巣篭もりを再開した。ヒナがいてもいなくても、行動に変化は無いようだ。
 その間、夫のヤッチはまるで無関心だ。礼儀正しい彼は、指で迎えにいかない限りカゴの開閉口が開いていても出て来ないが、一旦出たら自主的に帰る気はないのだった。

 9代目は、母似で黒く、体重も引き継いだ時には19gしかなく、粟粒の未消化便が多く見られたものの、よく食べて急激に重みを加えていった。19、21、22、24、25、26、28、28、29、29、30といった具合に、毎日気持ちの良いくらいの右肩上がりの成長曲線を描き、さすがに30g以上にはならなかったものの、すでに母似の小柄とはなりえない体格となった。最終的には28gくらいのやや大柄の文鳥になるだろう。
 性格はおとなしい。エサをねだる声は小さいが(というより、一羽っ子なので鳴く暇がないくらいに餌付けが早い)、「キューキューキュー」と甘え声を頻繁に漏らす。ずいぶん甘えっ子になるかもしれない。ヘイスケを始祖とする我が家の文鳥9代目で、また20日に高橋尚子さんがマラソンで復活優勝を遂げたのにあやかって、名前を『キュー』に決めたが、キューキュー鳴くのでちょうど良かった。

 キューの僚友、もしくは伴侶となるかもしれないのがカンとハルの子供だ。最初のつぼ巣での産卵は抱卵失敗に終わったが、今回は箱巣に替え、若い夫ハルも巣作りに迷惑なぐらいに真剣に取り組んでいた。11日に卵を6個産んでも抱卵を始めず気をもんでいたが、13日頃から完全夫婦交代制で抱卵を始め、18日に確認したところ、7個中6個が有精卵だった。喜びつつも一羽っ子政策の都合上、いつものように、その均質でどれも形の良い卵から1個だけを残し孵化と無事の成長を親鳥に託することにした。
 29日に確認したところ孵化しておらず、その卵も軽く感じたので、中止卵であったかと早合点していたら、12月2日の週に一回の卵検査で、居座るハルを押しのけた下に、思いがけず赤むけヒナを発見した。その前日か前々日には生まれていたようだ。
 父親のハルが生後8ヶ月の小僧で、その両親は初年度に抱卵失敗を重ねてもいたので、何回か失敗するだろうと先入観を持ちすぎていたようだ。現実のハルは非常に熱心に巣作りをし、子育ても上手なように見受けられる。カゴを取り出し箱巣のフタを開けても産座を動かず、指をつついてくるのだから、実に見上げた根性と言える。それに比べれば妻のカンの方がむしろ気楽で、物音しただけで一目散に箱巣から飛び出してしまう。その立場にならないと、案外わからないものだ。
 もしこのヒナが順調に成長し、さらにキューと異性であれば最高だ。両者の関係はゲンとオッキ同様に片従兄弟(従兄弟違い、従兄弟半)とそれなりに遠い。

 さて、カンとハルの卵とほぼ平行してオッキが産んだ巨大卵を、オマケとシロに托卵に出していたが、これは失敗に終わった。この卵は普通の卵の二倍にせまる大きさで、なおかつ有精卵だったので、試しに擬卵を抱卵しているシロに預けてみたのだが、孵化することはなかった。
 割って確認したところ、小さな胚がある一方、完全な黄味が一つあった。黄味が二つの双子で、一方だけが受精し途中で無精卵の一方の影響を受けて成長中止となったのだろう。もし二つとも受精していたらどうなっただろうか。体の一部が結合していたかもしれない。やはり、異常卵は興味など持たずに排除した方が良さそうだ。

 12月4日、放鳥時間にソウが出てこないことに気づいて、箱巣に手を入れたところ、冷たい感触があった。フタを開けると、目一杯体を伸ばした姿勢で硬直していた。お腹を見ると黒い部分があり、その下に腹水があるようでやわらかい。不治の病として話に聞く胆のう腫だったのかもしれない。
 2ヶ月ほど前から、内臓系疾患の症状(クチバシに青みがあり、翼を垂らし気味にする)が見受けられ、クル同様の長患いとなるものと見ていたが、急性症状が出てしまったのだろう。前日の夜は飛び回っていたし、朝もそれなりに元気で特別異常はなかった。
 初代ヘイスケの娘にして、5代目の母の冥福を祈る。
 再婚相手に先立たれたクラは再び一羽となったが、しばらく独身生活をしてもらおう。

2005・11
 あまり先入観を与えるのもどうかと思っていましたが、指針くらいにはなるかと、病気が疑われる際の個人的対応をまとめました(→コチラ)。また、おもにヒナの保温についても整理しておきました(→コチラ)。さらに、各写真集に最近の画像を加えるなどしました。

 シロは普通に我が家の生活を送れるようになった。飛行もだいぶうまくなり、明かりを消さないと捕獲出来ないようになり、中旬にはテーブルの上に降り、豆苗その他をバリバリ食べるようになった。オマケとの仲も上々だ。下旬に箱巣に切り替えたが、オマケに促されすぐに中に入り、オマケと一緒に巣作りに励んでいる。
 間もなく産卵を始めそうな様子だ(11月4日時点で3個産卵)、すでに18羽、オマケのひ孫が子供を産もうとする状況では、孵化させるわけにはいかないのが、残念なところだ。

 中旬にかけて、二世の誕生が望まれるカンとサイが産卵した。
 カンの夫ハルはまだ生後7ヵ月なので、産卵はもう少し先かと思っていたが、案外展開が早かった。当初カンもハルも落ち着きがなく、すぐにつぼ巣から出てきてしまっていたので、カンの卵はすべて有精卵と確認されず繁殖は失敗したが、その間徐々に自覚が出来て、あのハルが巣作りし、放鳥時間も交代で抱卵するようになったのは、行く末頼もしい限りだ。
 つぼ巣よりも落ち着くものと思い、下旬に箱巣に切り替えた。脚が曲がり、止まり木で眠るのが難しいカンの負担になるかと心配したが、翌朝には巣作りを始めていた。カンは一羽暮らしが長いので、メスながら自主的に巣作りをするのだ。その様子を見ていた当初箱巣を避けていたハルは、競争心をいたく刺激されたようで、気がつけばせっせと巣作りをするようになっていた。
 ハルはまだ生後7ヶ月の小僧だが、結構嫉妬心が強く、放鳥時にカンが浮気しないように目を光らせている(そのくせ、自分はオッキやモレのお尻を追いかける・・・)。カンが他のオスに尻尾を振れば、猛烈に追いかけて怒る。かくしてカンの独身時代の遊び癖は消えつつある。なかなか大した亭主ぶりだ。

 サイは箱巣になってから、放鳥時間も出てこなくなった。箱巣の中で熟睡しているので、放鳥時間に気がつかないようで、周囲で掃除を始めても、箱巣を叩いても、果ては箱巣の上ぶたをパタパタさせても気がつかない。フタを開け頭に触られてようやく気づく。何とも無用心な文鳥だ。
 そのサイも、換羽の兆候があったので、産卵はしばらくないものと見ていたら、産卵し始め、抱卵となればもはや完全に巣篭もり状態となった。卵の確認などのため無理やり外に出しても、とりあえず口いっぱいに煮干しをほお張ると、早く巣に帰ろうとソワソワする。帰宅時にはいつも、暗くして捕獲されていたので、どうやって自分のカゴに帰れば良いのか見当がつかないのだ。なお、夫のヤッチは巣作りと昼間の抱卵交代が任務と心得ていて、夜の放鳥時間は、巣など一顧だにしない。まさに男の中の男と言えよう。
 抱卵7日目くらいに検卵すると、3個の外部に陥没痕があり中止卵、2個が有精卵(他に1個カゴの底で割れていた)であった。陥没痕は誤ってつついてしまったのだろう。まだまだ拙いのは止むを得ない。しかし、1個だけ有精卵を残すと、その後の抱卵は完璧で、まるで鳴き声は聞こえなかったが、孵化予定日の11月2日に確認したところ孵化していた。
 このヒナは順調に成長してくれれば9代目となる。名前はやはりキューかココか・・・、しかし、「キューちゃん」は九官鳥の名前と相場は決まっているし、「コッコちゃん」はニワトリの名前とするのが定法ではなかったか?

檜作りだったりする・・・。前面もプラ板で観音開きにしたほうがかっこ良かったかな・・・。 この9代目予定のヒナが順調に育つかはわからないが(手乗りとして引き継ぐまでは正式の員数外)、その飼育施設はすでに完成していた。
 成鳥が体調不良の際、普段の生活そのままに暖房効果を挙げる簡易温室とするのを主眼としているので、鳥カゴを全体を覆い、天井部分に設置した上部ヒーターで暖をとれるようになっている。もちろん設計図など無く、その場の思いつきで適当にでっち上げたのだが、真ん中に間仕切り板をはめ込み、上げ底にすることで、ヒナ用保温室としても使えるようになっている優れものなのだ。
 暗くするためプラスチック板をダンボール紙で目隠しして、フゴの下にシート型保温器も敷き、脇に保湿のため水を入れキッチンペーパーを浸した皿を置き、前面にビニールシートと玄関マットを垂らせば準備完了。薄暗いところで、上下からぬくぬく出来るわけだ。実験したところ、室温19℃で保温室内26℃、フゴの中は29℃であった。まずは上々、あとは文鳥の若夫婦の健闘を祈るのみだ。

2005・10

 『飼育法』の手直しを若干おこない、ペレットについての提言に触発された考察を『文鳥問題』にまとめ、また『文鳥の系譜』の続きを載せるなどしました。
 また、ブログ形式でのリアルタイムな展開が興味深いホームページ『
文鳥time〜another〜』と『文鳥の日々』とリンクいたしました。

 上旬、何となく文鳥たちの行動が落ち着かなくなり、繁殖期の気配が漂い始めた。しかし、残暑が厳しく換羽中の者もおり、そもそもなるべく産卵は少ない方が良いので、のんびりと準備をしていた。箱巣と箱巣に敷く『ワラジー』を天日干しにし、巣材としてこつこつ買っておいた巣草を熱湯消毒して乾燥、また巣材として昨シーズンから使い出したい草は、畳屋さんからもらったものは太くて折れやすかったので、通販で装飾用のものを購入した。この長さ15cmに切りそろえられたい草を、お湯につけてもむと言うか折れ目をつけて乾燥させる。準備完了。

 下旬、カンとハルをやや大きめのカゴで同居させる。特に問題なし。あと数ヶ月して、ハルがおとなのオスの意識を持ち始めたら、自然に夫婦になるのではないかと期待する。
 その翌日、カンとハルをのぞくペアのカゴで、つぼ巣から箱巣に一斉に切り替える。放鳥中に行なうので、文鳥たちは気づかない。帰宅してから騒動になるが、一夜明け巣材を与えてみると、せっせと運び始める。良いタイミングだった。

 さて、繁殖の雰囲気が濃厚な中、換羽中のオマケが、求愛の相手をオッキに絞りつけ回している。バツ3のおじさんは、おとなしく余生を過ごせば良いものをと思うのだが、彼自身にその気は無いらしい。換羽期限定かもしれないが、性格がしつこいだけに、さらにエスカレートする恐れもある。
 オマケだけ一羽暮らしと言うのも、ほんの少しかわいそうな気もするので、この際、嫁候補を購入しようと考え始める。しかし、せっかく連れてきた嫁をオマケが気に入るかどうかは怪しい。何しろ彼には、セーユを徹底的にいじめ抜き、家出に追い込んだ過去があるのだ。そもそも、ゴマ塩文鳥がいなくなった今でこそ、オッキを追いかけているが、彼は数多いたメスの中で、一番白く華奢なハンを本命とし、その後もより白い順に求愛していたから、本来のビジュアルの好みはゴマ塩柄の文鳥に相違ない。しかし、そういった外見の文鳥が、そう簡単に見つかるものではない。
 そこで、いちおうゴマ塩を念頭に、現実的には白文鳥のメスを探すことにした。何しろ白い方が好きなのだから、真っ白なら大喜びだろう。それに、万一オマケが興味なかった場合でも、我が家の桜文鳥社会に久々に白文鳥が加われば、その存在だけでも貴重となるからだ。早い話が、飼い主が白文鳥も見たくなっていたのである。
※初代のヘイスケに白文鳥の嫁を迎えたのは、白と桜の産みわけが起きると考えたためで、その後我が家では、子孫を一番好きな桜に固定しようと、嫁も婿も桜文鳥を迎えてきている。これは、もし他の品種を嫁なり婿にしてしまえば、子孫が桜文鳥でなくなる可能性が高いのでそのようにしているまでで、他の品種も飼いたいとの願望を常に持っている。
 しかし、ひとつの一族で、10羽を軽く超えてしまうため、相互の婚姻を避けるべき異品種の別系を飼育する余裕がない。今回は、すでに子孫のいるオマケの同居鳥として繁殖を前提としないため、異品種でも良いという特殊な状況にある。
 白と桜なら産み分けの可能性も残っているので、もし万一、繁殖することになっても、決定的に不都合とは言えず、その点でシナモンやシルバーより迎えやすい。

 とは言え、繁殖に用いる予定の無い嫁を迎えるのは、代重ねを前提としてきた以上、釈然としないものもあり、有り金はたいてどこまでも探す気にはなれない。一日手近で探して、ダメなら計画自体ご破算にする心積もりで、出発。
 まず、いつもペアがべらぼうに安く売られている金魚店に行く。白ペアと桜ペアおり、白ペアのメスと見える方はオスより大柄、顔つきは優しげ、華奢な方が良いのだがその点目をつぶり、手っ取り早く買ってしまうことにする。そこで店内に入り、メスだけ売ってくれと言う。ところが、この実にまっとうな客の要求は(生き物は同時に死なないので個々でも売らなければおかしいと考える)、総入れ歯をどこかに置き忘れた店主のジイ様に拒絶されてしまった。
 その理由が珍しい。メスだけ売ると、残ったオスがさびしがり死んでしまうと言うのだ。そんな万に一つの可能性を客に言ってどうするのだろう?確かに相方に先立たれれば落ち込むが、それで亡くなった文鳥は、未だかつて我が家にはいない。しかし、この商売を始めて半世紀はたっているかもしれぬジイ様は、必ずそうなると思い込んでしまっているようだ。売らないのかと念を押しても、「すいませんね」と言うばかりだ。
 商人にあるまじき遁辞だが、可能性はゼロでは無いだけに、文鳥を愛する者としては一蹴はしがたいものがある。重ねて要求するのも面倒で、こだわって交渉する理由も無いので、次に行く 。
※もしこだわるなら、とりあえず「へぇ〜!お宅で買ったら、どっちかが死ぬともう一方も助けようが無いの!」と嫌味を言ったと思う。もし不幸にして一方が若く亡くなった時、代わりの相手を求める客に売らない店など無責任過ぎてお話にならない。
 そもそもこの店の場合、ペアの一方を売ることで一方が死んでしまったとしたら、粗食で冬でも屋外展示などしているような環境に原因を求めるべきだろう。そのような環境なので、ショックによる免疫力の一時的低下が病気の発症に簡単につながってしまうに相違ない(つがいの一方が死にかかっていたり、なぜか一羽だけになっていたりする現場を何度も目撃している)。つまり、本当に文鳥の身を考えるなら、そちらの方を改善しなければならないものと思う。しかし、ずいぶんな御老人にそこまで言うのは、なるべく遠慮したいところだ。
 なお、的外れながら文鳥の身を心配してくれているらしい(その場しのぎの遁辞の疑いも持っている)ジイ様の名誉のために言っておくが、ペットショップの飼育環境としては、この店でもまだマシな部類である。

 通路にウサギが寝そべっている鳥獣店。ペアで展示されている白文鳥は、オスは良いがメスはぴんとこない(桜文鳥は非常に良いのがいたのに…)。シロ、桜、シナモンのかわいらしいヒナの姿を横目に、次に行く。
 大きなショッピングセンター脇のペットショップ。「抱卵中」の白文鳥のペアが「特価3800円」、しかも小さな「カゴ付」で売られていた。まさにディスカウントだ。どういった経緯でこのような境遇に立ち至ったのか知らないが、文鳥用ではないつぼ巣(キンカチョウ用のくびれたもの)に2、3個卵を産んだ状態で売りに出されるこの夫婦こそ哀れだ。さすがに、この不遇のペアを引き裂きメスだけ買う気にはなれないので、次へ。

 昔ながらの小鳥屋さん。ここがダメならあきらめる事にして入る。文鳥が一羽だけ、それも白文鳥がいた。換羽中だが、一見してかわいらしい。さらによく見ようとしていたら、早速世話焼きの気のいい店主のオバちゃんが近づいてきて、まだ何も訊いていないのに、メスで、生後10ヶ月で、文鳥のメスだけ入荷するのは珍しいとか説明してくれる。
 かわいい印象の白文鳥の若いメス、これを忌避する理由は何一つ無い。「これ下さい」と値段も訊かずにさっさと告げる。このお店で高いわけが無いとたかをくくっているのだ。このおそろしく早い客の反応に違和感を覚えたのか、否、このオバちゃんは誰に対しても昔からこうなのだが(5、6年前に話したきりなので向こうは当然覚えていないはず)、いろいろと飼育上の注意事項を述べ始めた。とりあえず、迎えた当初は「長いの」を与え、外には出すなとか何とか…。
 長いの…、一包み見せられたところ、カナリアシードであった。そんなもの嫌というほど食べさせてやるし、まして新入りのエサには「乳酸菌まで混ぜちゃうのだ!」と言おうかと思ったが、話がかえって長くなってしまいそうなのでやめる。
 オバちゃんは一くさり終えると、その白文鳥をつかみ出し、頭、クチバシを見せながら、今度はメスの特徴を説明してくれた。…これだけ無駄話をされて、嫌な気分にさせないのが、この御仁の偉大なところと言って良い。しかし、適当に相槌を打つのも正直しんどい。
 3500円で消費税はまけてくれるそうだ。あまりにも繰り返すので、カナリアシードも買うことにする。200円。家にもあるがそう簡単に腐るものでもなし…。

 家に帰り、カゴに入れた白文鳥は、緊張して身動きもしない。名前は、白文鳥だからシロで良いだろう。
 購入から一夜明けても、2階に隔離しておいたシロは固まったように動かない。少し心配になり、購入先はさほど不衛生な店ではなかったので、「文鳥団地」の左隅の空きスペースに移動した。他の鳥の様子を垣間見て、少し安心したようで、他の文鳥たちが水浴びをする音を聞き水浴びを始めた。
 次の日の夜、特に問題が無いように見受けられるので、好き勝手に遊ぶ他の文鳥たちの見えようにカゴを右にずらし、出入り口を開けておいた。すると、間もなく案外あっさり外に出て来た。しかし、まるで飛べず、這い歩いてカーテンに取り付き、懸命によじ登るではないか。
 危険飛行防止のため、事前に風切羽を両翼3枚ずつ間引いたが、その程度では、普通は高速で飛びにくくなる程度の影響しかない。そもそも飛翔のための筋肉が未熟で、まともに羽ばたけないようだ。握った感触からしてフワフワで頼りない。
 簡単に捕まえテーブルの上に置いてやると、しばらくぼんやりし、今度はスダレをよじ登り出した。鳥のくせに飛ばないとは、最悪の運動神経と言って良い。あのノロですら、パタパタと無器用には飛べたのに…。頭の回転も鈍いようで、文鳥らしいキビキビしたところがない。しばらくリハビリが必要なようだ。

 我が家の現在の文鳥たちは白文鳥を見たことが無いので、大騒ぎになるかと思ったが、案外無関心だった。変な動物とは思わず、たんに白っぽい新入りが来た程度にしか思っていないようだ。
 白っぽい文鳥と認識したのなら、オマケはどうするか。実に思ったとおりで、存在を認識するとすぐにシロから30cmくらい間をおいた位置に行き、胸をはり首を伸ばして様子をうかがいはじめた。さらにそこから数cmだけ近づき、カーテンレールにクチバシをこすり付けるポーズをとる。これは、異性に対して「恥ずかしさ」を示す行動だ!
※こういった文鳥のしぐさについて書くと、動物を飼育したことのない人は、あまりに人間のようなので、信じられないかもしれない。しかし、コンラート=ロレンツ博士も言っているが、動物を飼ってしっかり観察してみれば、人間の行動は他の動物に比して大して特別ではないと気づかされることが多い。
 そのまま近づきつつ、さえずって見せれば完璧なのだが、オマケの阿呆はそれをせず、「きれいな子がいたよ!」とでも言いたげに、飼い主の肩に戻ってからさえずりだす。これを何度も繰り返す。…これでは、内気な小学生の男の子ではないか。
 この点オマケの実父との疑惑もあるグリは違う。たまたま横にシロがいるのに気づくと、とりあえずさえずってにじり寄っている。シロもまんざらでない気分になったようだが、嫉妬した他のオス文鳥が(別段シロに興味があるわけでもないのに)、とび蹴りの勢いで間に入って引き裂かれた。グリは執着はゼロで、その後はシロを追いかける様子は無い。オマケの娘のセーヤなどもっと積極的で、新入りには真っ先に接近し、タイプのオスなら、付け回し押しの一手で篭絡したものだ(タイプでなければ小突いてからかっていた…)。
 考えてみれば、オマケも好きになった文鳥をしつこく付け回すが、何か勘所がずれているようで、同居以前に相手から絶対的好意を寄せられたことが無い。果たして今回も、飼い主の強制で同居させ、相手の気持ちがオマケに向くようにする必要があるものと思っていたが、それは杞憂に終わった。シロは放鳥3日目にはオマケを特別な存在として、逆に後に付いて歩くようになり、4日目には部屋の隅のつぼ巣に一緒にもぐりこむまでになったのだ。シロは、カゴに設置した巣にすら近づけずにいたのにである。
 このように良い関係になれば、オマケは飼い主の意向など無視して、押しかけ亭主になるに相違ない。文句を言われる前に、その日から同居させてしまった。翌朝どんな様子か心配したが、それが当然のように仲良く生活しているではないか。思い描いた以上の結果に、喜ぶよりあきれてしまった。

2005・9

 『文鳥問題』に、執拗に消えない迷信についての見解をまとめました。また、自分で何を書いたか忘れている過去の『文鳥問題』を読み直し、誤字脱字、言い回しなど少々修正しました。ついでに、「10.続獣医の誤解」にアワ玉否定説の批判を加筆し、「16.鳥カゴなど」のその後に、個人的なエサ入れ・水浴び容器の理想図(模型)を載せました。

 初旬、オッキの産卵を止めようと思い、カゴからつぼ巣を取り除いたところ、一週間ほどしてゲンとオッキ夫婦が放鳥中に部屋の片隅に設置してあるつぼ巣を占拠するようになった。テーブル上でおやつも食べず、水浴びもせず、ひたすらその巣に引きこもり、他の文鳥たちが近づかないように威嚇している。当然、放鳥時間が終わってもカゴに帰ろうとせず抵抗する(暗くして捕獲、強制退去)。
 しかし、そのつぼ巣は、もともとモレやハルが執着する場所だったので、特にモレが反発、巣を奪還しようと突撃を繰り返し、かえってゲンに頭を噛まれ、まさにつまみ出されるといった事態が展開するにいたった。
 こうした騒ぎは、局地的なものなら良いのだが、複数の文鳥を巻き込む争乱に発展する可能性を秘めている。収拾のつかない争乱状況は避けたい。ここに至り、飼い主はゲンとオッキのカゴにつぼ巣を再設置したのだった。
 また産卵するのではないかと不安だったが、1個産卵した形跡はあったものの、何とかオッキは換羽に転じ産卵は止んだ。オッキの換羽は、尾羽がすべて抜け落ちる「シッポナ」状態になるなど、現在順調に進んでいる。

 中旬からヤッチの態度が変わってきた。飼い主ベタベタの「握り文鳥」だったが、ほとんど手のひらには入らなくなり、態度もよそよそしくなった。同時に、今まで無視していた同居のサイを意識し始め、その動向を追うようになっている。ようするに飼い主を捨て、新しい恋ビトに興味を移したわけだ。はなはだ残念だが、これは望んだものなので、移り気を責めるわけにはいかない。
 放鳥中の様子を見る限り、サイの方の「本命」はハルのようだが、ヤッチを嫌うでもないので、巣作りをするようになれば、良い夫婦になってくれそうに思う。

 1998年に購入したメタルラック(右棟)が、だいぶ錆びてくたびれてきたので、買い換える事にした。昨年も利用した『ニッセン』の通販だ。商品名は『メタルシェルフ』。
 150cm×91cm×36cm、送料込みで5490円。昨年はメッキ処理のタイプを購入したので、今回はアイボリーに塗装されているタイプを注文した。作りもしっかりしており、知る限り、他の通販に比べて割安、サイズも豊富でありがたい。
 9月1日に届いたので、放鳥時間中に組み立てと交換を済ませ、文鳥たちの元に戻ってから気がついた。これはまずい・・・、と。放鳥している部屋から薄暗い「文鳥団地」を見ると、新しく美しいラックが、その姿を白く浮きたたせているではないか!
 今までとは落差が大きい・・・ということは、文鳥たちが警戒して鳥カゴに戻らないことを、意味しているのだった。案の定、放鳥時間終了で「文鳥団地」へ追い立てても、みんな回れ右して戻ってきてしまう。仕方なく、ナツ、ノロ、ソウ、クラ、グリ、セーユ、オッキ、カン、ゴン、キタといった、いつもは帰すのに手間のかからない面々を、いちいち照明を消して捕獲するはめになった(照明をリモコン式に変えておいて良かった)。
 このままでは、慣れるまで一週間くらい、憂鬱な捕獲作業が続きそうなので、翌日、左右のラックを入れかえてみた。すると、あまり抵抗せずに、ほとんどいつもどおりに帰ってくれたではないか。ちょっと事前の配慮が足りなかったが、何とも神経質なものだ。

2005・8

 白文鳥君たちの今後の動向が気になるホームページ『文鳥の城』とリンクいたしました。
 6月にメールを受信できない状態があり、理由がわからず悩んでいたのですが、5月末に導入したスパムメール対策ソフトの設定に問題があり、メーラーを無視した状態で自動で受信していたのが真相だったようです。ご迷惑をおかけした皆様に、改めてお詫び申し上げます。

 クチバシの根元がはげた状態のオッキには、早く換羽して欲しいのだが、なぜか一羽だけ産卵を続けている。初旬に抱卵をあきらめたので、もう止めるかと思っていたら、中旬には産卵の気配を示し、慌てて用意したカトルボーンを砕いたものをバリバリと食べ、顔色ひとつ変えずにまた産卵を始めてしまった。そして毎度毎度の正確さで6個産卵、抱卵もきっちりと始めてしまった。どうしようもないので、8月にはつぼ巣を取りのぞくつもりだ。
 産卵や抱卵期以外のオッキは、人間の手のひらが大好きな文鳥で、実におとなしいのだが、産卵・抱卵となると、まるで落ち着きが無くなり、ちょこまかちょこまか右往左往して物をあさり回る。煮干しをクチバシにくっつけるのはまだしも、そのクチバシで人間の上着を引っ張りまわすのはやめてもらいたい・・・。30分ほどすると、カーテンレールから鳥カゴの方向を見やり、放っておくと飼い主の元に飛んできて、またカーテンレールへ・・・。カゴの開閉口は洗濯バサミで止めてあり、自分で帰ることも出来るはずだが、彼女は人間の手による送迎でないと帰宅しない。かわいいのだが、実に面倒だ。

 中旬にはヤッチとサイの同居を開始した。ヤッチは母のオッキに似て、基本的に平和主義者・・・というより、飼い主にかまってもらえればそれでOKのベタベタ文鳥なので、同居しても大喧嘩にはならいと予想していた。しかし、念のため大きめのカゴにつぼ巣を2個設置し同ておいた。
 確かにヤッチがサイをいじめて執拗に追い掛け回すことは無かった。と言って仲良くする気配は微塵も無い。まるで眼中にない様子で、エサやつぼ巣にいる時に、目障りに思えば軽く追い払うが、あとは完全に無視している。そもそもこのヤッチは、飼い主と舎弟のハルにしかさえずったことが無い・・・。
 サイはつぼ巣には入れないことをのぞけばが、水浴びし、青菜を食べ、別に不自由は無いようだ。同居のヤッチに相手にされないので、こおちらも適当に無視し、たまにカゴをのぞきに来るハルに心惹かれている様子だ。

 ハルはカンの婿になる予定なので、ほぼ一週間に一回30分程度カンのカゴで同居させ、お互い意識させようとしている。カンの方は、この若くて外見も良いオスにまんざらでもない様子で、つぼ巣に誘うようなしぐさを見せる。しかし、ハルの方はまだ子供で、さえずってプロポーズするなど思いもよらないようだ。無遠慮に自分のカゴのエサを食べ、ブランコに乗り、つぼ巣を占拠する。そんなハルに、だんだんカンが腹を立て、つぼ巣の奪還を目指そうとすると、関係悪化を恐れハルを元に戻すようにしている。
 その独身女性のカンは、弟のゲンがいちおう愛妻家になり、相手になってくれないのに危機感を持ったのか、グリに猛烈にアタックし始めた。よりによって・・・、グリはカンにとっては祖父の伯父、もしかしたら曽祖父かもしれず、セーユという妻のある身だ。しかし、恋愛に関しては天才であった母(故セーヤ)の血を継ぐカンは、放鳥中に正妻を実力で排除し、グリの側をついて回るようになっている。
 危機感をいだいた飼い主は、前述のようにハルとの関係が深まるように画策しているものの、怪しい空気の立ち込めたまま、秋に突入してしまうことになりそうだ。

2005・7

 『HOEI』の鳥カゴ「朝日2号」の新型を購入したので、散々に批判しました(『その後』)。文鳥以外にも話題豊富なホームページ『千葉ねころびの森』とリンクいたしました。

 それで良かったのか、毎度悩んでしまうのだが、7歳のクルの病状悪化に当たって、病院に行くことをしなかった。素人判断以外の何物でもないことは、十分承知しながらも、不治の病だと考えたからだ。衰弱しているそれなりに高齢の文鳥に、通院、隔離、投薬などしても、文鳥にとっては迷惑なだけで、いじりまわした挙句に数ヶ月の余命を得ても、手をつくしたという飼い主側の免罪符となるくらいが関の山のような気がしてしまう。それなら何もしないで、飼い主として自責を感じた方が、文鳥自身には良いのではないか。しかし、当然、まだ若く、治療すれば病気が治ると考えれば通院すべきで、私もその点やぶさかではない。この判断がいつでも悩ましい(ケガはすぐ通院)。
 クルの場合、一昨年に骨折して以来、動きが緩慢になり、気がついたら慢性的な内臓疾患に結びついていたように思える(糖尿病性?)。最終的な症状は、5月の下旬に軽く口をパクパクしながら呼吸するようになったことに始まった。その時点で、これは死病だと受け止め、食欲も正常、フンも正常、くしゃみをするわけでもない7歳過ぎの文鳥に、今さら積極的な行動をする気にはならなかった。しかし、昨年の11月に同居のブレイに先立たれたあたりで、病院に行くという選択肢があったように思える。当時7歳目前、・・・やはり同じ結論を出したように思うのだが。

 病状は徐々にでも急速にでもなく、段階的に悪化し、6月14日の夜には重篤となった。前日まではカゴから自分で外に飛んで来たが、そのような力は無くなり、下段に設置したつぼ巣でぼんやりしている。取り出すと、体は硬直したようで、すでに脚は動かせない。手の中に入れ、スポーツドリンクを少々口に含ませたていたが、それでも時折テーブルに這い出て、自分でエサを食べようとする。これもいつもの事だが、生命とは実にたくましいものだ。
 クルは、手の中よりつぼ巣で静かにしていたい気配を感じたので、居ざり歩きでもエサが食べられるようにカゴの底上げをした上で、下段のつぼ巣に帰した。その後、同居のオマケを迎える際に、いったん自力でつぼ巣の外に出て、また自分でもぐりこんでいたので、うまくすると今晩は持ってくれるかも知れないと思った。本当は特に意味はないが、朝になれば、回復するような気がするものなのだ。
 しかし、午後10時45分頃には息絶えていた。つぼ巣の中で目をつぶり、口を動かしていないのに気がつかなければ、まったく眠っているのと同じ姿だった。
 つぼ巣から亡き骸を取り出し、頭をなぜていると、口と鼻の片方から血があふれてきた。気管支にうっ血があったようだ。肺にでも問題が起こっていたのかもしれない。とにかくティッシュペーパーで血をぬぐい、みるみる死せる者の姿に変貌していく亡き骸を、予備のつぼ巣に安置した。

 2代目のチビと婿ブレイの初めの子である彼女は、放鳥中まったく抱卵されなかった卵から一羽だけ誕生し、満足に給餌してもらわなかったのに生きながらえた奇跡の文鳥だった(ミラクルだからクル)。人間から餌付けされるようになってからは、少し先輩のゴマ塩三姉妹(血縁的には叔母)たちと自由に過ごしたが、祖父のヘイスケに指一本噛みとられ(ただしヘイスケの犯行とする証拠はない)、傷口が化膿しかけて危険になったり、飼い主のお尻に敷かれて窒息しかかったり、考えてみればいろいろな出来事があった。
 三姉妹の長女マセとライバル関係になったり、内向的な夫サムと適当に付き合いつつ、ヘイスケの愛ジン然と振舞ったり。おそらく産卵の影響で骨折し、ギプス生活を送り、夫のサムに先立たれ、実父のブレイと同居し、さらに孫のオマケと同居し・・・。いろいろご苦労様でした。

 ハン、ガツ、そしてクルに先立たれたオマケ、祖母世代のゴマ塩柄以外は相手にしないのだから、これはある意味必然とも言える。このオマケ、「かまってくれなきゃ噛んじゃうぞ!」と言った、生来愛情過多で迷惑な文鳥だ。妻に先立たれると、数日だけ独身時代のように飼い主にまとわり付き、それからタイプのメスに果敢にアタックするのが常だが、今回は勝手が違う。なぜなら、オマケが恋愛対象として認める文鳥は、我が家からいなくなってしまったのだ。そもそも物心ついた時から、色がらくっきりの姉ゴンを敵視したのから始まって、彼は色の濃い桜文鳥のメスにはさえずったことすらない。
 この5歳の愛情過多で、おそろしく頑固な好みをもつ文鳥の嫁を探す気もないので(せっかくゴマ塩柄を見つけてきても、いじめ倒されるかもしれない)、真性「握り文鳥」のヤッチ(実のひ孫・・・)などと争いつつ、飼い主の手首を根城に日々を過ごすのが一番だろう。
 そのように考えていたら、案の定恋愛対象を失ったオマケは、飼い主にまとわり付き、そのためヤッチがやきもちを焼き、手を出すと拗ねて見せるようになった(素直に乗らない)。まったくややこしい・・・。

 3月生まれのハルは、6月末にはすっかりおとなの姿になった。胸にぼかしがない代わりに、「両肩」の雨覆いに白い羽一枚ずつ見え、のど元が半月状に白いといった、母のモレに良く似た素晴らしい外見をしている。兄貴分のヤッチに小突かれても、まるで気にせず付きまとい、その結果、まったく血縁関係がないにもかかわらず、ブレイ流のさえずりを会得した。
 朝のエサ替えの時に、ヤッチとハルだけカゴの外に出すのだが、ハルはエサの大ビンの中に入り込みエサを食べる。ふたを閉められるかもしれないとは考えないらしい。能天気で食い意地のはっているところは父のシマ譲りだろうか。
 31gもある巨漢のヤッチの隣にいると小さく見えるが、実は28gと立派な体格をしている。小さい卵からでも、成長するものは成長するようだ。
 容姿端麗でさえずる若者に、最近隣カゴの独身娘カンが興味を持ち出している気配がある。ハルは能天気なので、この気の強いお姉さんに、幼い頃小突かれたことにわだかまりはないようだ。この両羽が自然にカップルになるのが望ましいのだが、さてどうなるだろう。

 一方ヤッチの嫁候補として先月加入したサイは、小さい体にしてはバリバリと、特に小松菜を毎日2枚はぺろりと食べ、間引きされた翼をパタパタ鳴らして十分運動もするので、大きくはならないが、筋肉質になってきたようだ。脚元ががっしりとして、姿勢が良くなった。
 この目の大きい華奢な文鳥は、その体格に似合わず地声がやたらと大きく、結構あつかましい。その性格に気づいたのかどうかは知らないが、オスたちには敬遠されるようになった。しかし、そのおかげで我が家の女帝であるゴンの覚えはめでたくなるのだから、何が幸いするか分からない。最近では、ゴンを尊敬するかのように近くをウロウロするようにもなった。
 基本的に、体格が立派な文鳥が好みなのだろう。カゴごしにヤッチを近づけても、嬉しそうにしている。問題は飼い主を恋ビトと信じるヤッチだが、さてどうしたものだろう。

 声が裏返りさえずれなくなったキタは、日々にリハビリに励み、元通りさえずれるようになった。昨年来お腹が涼しげだったので、寝冷えしたのか?不思議な現象だ。

2005・6

 常設するほどのものではないと思うのですが、いちおう動画を保管しておく場所(『動画の天袋』)を設けました。また、文鳥を購入する際の、あくまで個人的なお店リストを公開してみました(『ペットショップ踏査の覚書』)。

 5月8日のセーヤの急逝は、いつもの事ながら意外であった。
 セーヤは私の感覚で言えば近親交配の子であり、言わば血圧が高いハイテンションな個性を持つ文鳥でもあったので、あまり長生きしてくれるとは思っていなかった。それにしても、2年4ヶ月で命がつきようとは、まことに残念としか言いようがない。
 他の文鳥たちが換羽に入ったにもかかわらず、産卵、抱卵を続けていたセーヤは、5月7日夜についにあきらめ、放鳥の際はカゴを出て遊んでいた。その時は何ら変わった様子はなかったが、翌朝、羽毛を膨らませけだるそうにしていた。もともと産卵が重たいことのある文鳥で、チアノーゼ症状(貧血でクチバシが青くなる)も見られなかったことから、早速産卵を始めてしまったものと軽く判断したのは、今思えば甘かったと言える。
 その後、家での用事をしながらセーヤの様子を時々見に行ったが、つぼ巣に入って姿を見せようとしない。自分なりに安静にして産卵するのだろうと、無理につぼ巣の中をのぞくのを避けていたが、正午になり、不審を感じてつぼ巣に手を入れた。いつもなら強烈な突きを浴びせられるところだが、まるで反応がない。踏み台にのって奥を探ると、動きのない物体が、すでに冷たくなっていた。
 お腹を触ってみたが卵は無く、カゴに産卵した形跡も無かった。死因はまったくの不明というしかない。しかし不明では釈然としないので、いろいろと考えてしまう。一週間以上前に爪を切った折、断末魔の鳴き声をしていたのは、あまり体に良くなかったのではないか。・・・しかし、その後何ら変化はなく、呼吸器系が問題とも思えないので、無関係だろう。それでは、一昨日からセーヤのカゴに除湿機からの風が直接当たらないように設置したMDF材使用の仕切り板の影響はどうだろう。・・・しかし、MDF材に環境ホルモン的な慢性の影響が万一起きても、急性症状の現れるものではないはずで、そもそも揮発したものがこもるような構造の家でもない(隙間風の入るあばら家)。
 結局、近親交配の悪影響を推測する程度でしかない。
 そもそもが、芸達者で、早熟で、ビジュアル絶対重視で、オス文鳥キラーで、箱入り娘ながらあっさり飼い主を捨て、抱卵・育雛に情熱をささげ・・・、なかなか常識では測りにくい個性の持ち主だっただけに、最期も普通ではなくて当然なのかもしれない。

 疾風怒濤の一生を閉じたセーヤは、ヒナ羽毛の時から付きまとった、あのあこがれのケイと、あの世で再会しているかもしれないが、問題は後に残された夫のクラだ。
 このやや小柄ながら、飼い主とセーヤのお眼鏡にかなった端正な外見の桜文鳥、何が目的か知る由もないが、「アチョ!アチョ!」とでも掛け声が聞こえそうな様子で、ブランコを持ち上げ放り投げそれに乗る、といった自主トレを繰り返したり、ボレー粉入れなどを何度も放り捨て・・・、これはこれで奇怪な個性の持ち主を(おかげでセーヤの個性に圧倒されずに済んだと言える)、一羽暮らしにしておくのべきか否か・・・。
 今、一羽暮らしをしているメスと言えばソウとカンだ。しかしカンはクラの娘で、ペローシスという障害もあり、ハルがオスならペアにする予定もあった。一方のソウはすでに6歳、両者の年齢差はダブルスコア以上だ。
 ふと、モレと夫婦にすれば、小柄で実に端正な桜文鳥が生まれるだろう、という考えが頭をよぎる。しかし、それなりに仲の良いシマとの夫婦関係を崩すようなことは出来ない。また、もしハルがメスならこれと夫婦にするのもいい考えのように思えたが、やはりそうなれば、ヤッチと夫婦にするのが順当だろう。
 女房の蒸発に放鳥時間も手持ち無沙汰になったのか、それとも何か思うところがあるのか、セーヤが好きだった部屋の隅のブランコに乗るようになったクラ。一方、妻帯者のシマを我が物にしようと、本妻のモレを攻撃しているソウ・・・。何とは無しに、このままだと怪しげな方向に事態が進行していきそうな気がしてきた。やはりソウとクラをペアになるのが、文鳥社会の平和と安定につながるに相違ない。
 そこで、換羽後に考えていた同居を早め、14日朝、ソウのカゴにクラを放り込んだ。すると、案外にもクラは大喜びで、途端にソウの機嫌をとり始めているではないか。節操の無い奴だ・・・。

 さて、3月半ば生まれのハルについては、その様子からオスだろうと思っていたが、ヒナ換羽も始まったのにぐぜる様子はなかった。これは、またも私の観察は的外れに終わったのかと思いはじめた17日の放鳥時、一瞬ぐぜり音が聞こえた。そしてその日以来、日に日にぐぜりは明瞭となっていった。
 予想は当たったが、オスでは8代目のヤッチの嫁には出来ない。そこでとりあえず嫁候補を外部から迎えねばならないので、例のごとくペットショップ行脚を始めた。理想としては、清潔な小鳥屋さんで売られている、色が濃く胸にぼかしがあり、小さめで若い桜文鳥のメスと言うことになる。今回ヤッチが30gの巨躯の持ち主なので、あまり意図的な大型化が進まないように、小柄で安産な我が家のモレの姿を念頭に探すことにしたのだ。
 タウンページのペットショップ(鳥)項目を基に、未踏のお店を実地調査しつつ(といっても数秒見るだけのことが多い)西方面、南方面の嫁探し作戦は、ともに空振りに終わった。しかし、続いて北方面、川崎市東部の探索では、個人的な基準を満たす桜文鳥3羽にめぐり合った(全て別々の店)。そのうちもっとも気にいった桜文鳥を店頭に見出した時は、これ以上の存在は無いものと思ったほどだったが、残念なことにオスかメスかわからず、お店のおじさんにはオスと断定されてしまったのであきらめざるを得なかった。仕方なく、2番目に気に入った川崎駅前さいか屋のペットコーナーで売られていた、色が濃く小柄で、大きな目が印象的なメスを購入した。ペアで9450円とあったが、メスだけ5250円で売ってもらい、ペットショップ20数軒を経巡った今回の作戦は終了した。
 さいか屋出身なので、名前は「サイ」としたこの文鳥は、数日隔離した後、我が家の文鳥社会にデビューし、日々に溶け込みつつある。

 換羽も終了しつつある文鳥が多い中で、キタとクルに心配な現象が起こっている。
 キタは、鳴き声が裏返ってしまい、あのけたたましい文鳥離れしたさえずりが出来なくなってしまった。声以外にはいたって元気で、この事態をどのように考えて良いのかわからないが、彼はただ今裏声でさえずりを再構築中だ。いろいろな意味で、興味深い現象だであり、要注意だ。
 一方クルには、心肺が弱まっている傾向が見て取れる。食欲は十分なのだが、クチバシを軽く開閉しながら呼吸をしているのは、我が家の系統にとって良くない傾向と言わねばならない。この姿を見た後で、良い展開があった記憶が一つも無いのだ。
 クルは数年前に脚を骨折して以来、不健康な印象になってしまった7歳の文鳥だが、同居のオマケのためにも、もう少しだけがんばってもらいたいところだ。

2005・5
 文鳥の系譜』の続きを書き、文鳥本『文鳥ことばで話そう!』の加筆修正(換羽についてや遺伝の基礎事項について追加)を行い、『さえずりの殿堂』の昔の録音(ヘイスケ・ブレイ・サム)から少し雑音を除去し、『文鳥問題』に「獣医の誤解」の続編を追加しました。

 モレとシマの子ハルは、孵化30日目に初飛行、39日目にひとりエサ(その後4、5日アワ玉と青菜しか食べなかった)といった具合に、何ら問題もなく成長している。
 そのハルは、多分オスだ。根拠は顔つきの印象(「メスのほうが聡明」という他人には説明困難な基準)と、ゆれるものに興奮して「ギャル・ギャー」と鳴く事(ぐぜりではない)、口笛やヤッチのさえずりに反応するといった行動上の特徴だ。しかし、「オスだオスだと思わせるほどメスだ」という考えが、私の気持ちの中に大きく伏在しているので、かえってメスのような気もしてくるから、面白い。
 性格は慎重な面があり、部屋の情報にあるブランコなどで遊ぼうとはしなかったが(4月末から遊びだす。その点では少々奥手のようだ)、それでいて他の文鳥に物怖じすることはない。ヤッチには、かなり邪魔者扱いされて突かれるが、そのヤッチが左の手のひらに乗り、右の手で背中をポンポン叩かれつつさえずると(「カスタネット文鳥」の別名を持つ)、右の手の甲に乗ってのぞき込む。
 この同期の2羽は、今のところそれなりに相性も良さそうに見える。ヤッチが必要以上に追い立てることも無く、ハルが恐れて近づかないということも無い。ハルがメスなら良い夫婦、オスなら笑える師弟関係になりそうだ。

 今年は例年より早めに、そしてこれも珍しく、10羽が一斉に換羽期に突入している。モレから始まって、クル、オマケ、ゴン、キタ、グリ、セーユ、ゲン、オッキ、カン、そしていつも夏に換羽するソウ、それぞれに生えかわりの真っ最中だ。
 一方、まだ産卵を続けるセーヤと、その夫クラ、まだ我が家に来て一年未満のシマ、年寄りのナツと、その夫のノロは、まだ換羽の気配がない。掃除をする飼い主としては、少し時期をずらしてもらった方が良いのか、一斉のほうが楽なのか、悩ましいところだ。
 換羽中の反応も個性でそれぞれだが、我が家の文鳥たちには人間にしがみついてくつろごうとするものが多い。おかげで場所取りで騒がしいことにもなる。しかも、今は飼い主ベタベタのヤッチとまだ幼いハルがいて、それぞれ右手と左手は自分の寝床と心得ている。換羽となると気が小さくなるゲンやオマケは、なかなか安住出来ない。

 元気なゲンがすすけて静かだと、こちらの調子が狂うが、オマケがおとなしいと文鳥で困る奴がいる。ノロだ。彼は他の鳥が手のひら水浴びをするのを、手首あたりで待ち構え、その水しぶきの余慶を預かるのを日課としているが、その「他の鳥」はオマケである事が多い。
 ノロは「ウチの子」でもないくせに、台所と今を往復飛行し、手のひら水浴びを要求するが、自分だけでは、手首あたりをウロウロしては水を飲むばかりで、手のひらには入れないのだから、邪魔くさい。
 やはり「ウチの子」ではないのに手乗りであるセーユは、顔がでかいだけあって態度もでかく、気が向くと手のひら水浴びもしてしまう。あつかましさはブレイのメス版と言って良い。

 4月末になると、初夏の陽気にもなったので、スチールラックを覆っていたビニールシートをはずした。さらに、窓にはカーテンレールを付け、片面をスダレで隠せるようにした。
 昨年から、近くの街灯がやたらと明るくなり、窓辺の文鳥たちに悪影響を与えそうに思え気になったのだが、ビニールシートが障害となり、応急的な対策以上のことが出来なかったのだ。「余計な事をしやがって・・・」と言うのが本音であっても、街灯を明るくしてもらって、文句を言うのも妙な話なので、こちらで工夫するしかない。
 まだ抱卵中のセーヤを追い立てての作業となったが(と言っても30分とはかからない)、とりあえずスダレで「文鳥団地」に面する窓を隠せるようになった。これなら、真夏の日中には日差し除けにも使えそうだ。
 ついでに、居間と鳥カゴスペースを区切る竹スダレがくたびれていたので、取り替えた。今までが濃い茶色だったので、同じ色のものを探したのだが、適当なものが見当たらず、価格(398円)のわりには丈夫そうな明るい色ものにしてしまった。しばらくは、文鳥たちの不評を買うのを覚悟していたが、警戒は一日のみで済んだ。ただ、今までよりも少ししがみつきにくい構造になっているので、カンやモレといったその体勢が好きな文鳥たちにとっては、まさに「余計な事をしやがって・・・」に相違ない。

2005・4

 オッキは、我が家で一番美しい(と言う事は飼い主の脳内では世界一)桜文鳥である母のゴンに似て、美しい姿をしている。また、他のオス文鳥とは浮気をしない妻の鏡で、巨大で整った卵を安産する母の鏡でもある。さらに、我が家では極めて珍しい「握り文鳥」であり続け、それでいながら、抱卵となれば放鳥時間にも出てこずに、巣ごもりを続ける。実に何とも見上げた文鳥なのだった。
 ただ、『卵検査』と称して巣ごもりの邪魔をされ、いったん外に出てしまうと、そわそわうろうろしてカゴに帰ろうとしないのは、まさに玉に傷だが、自分ではカゴに戻らず、戻る時は送迎してやらないといけないところも、愛嬌があって良い。
 それに比べて旦那のゲンは、抱卵3週間近く経過し、オッキが抱卵をやめる頃になると交代するが、それまでは気にしながらも任せきりを押し通す。亭主「腕白」だ。

 すでにヤッチという立派な後継ぎはいるので、むしろオッキと相思相愛の飼い主としては、「卵なんて産むな、どうせ擬卵だから巣ごもりの必要なし!」と思っていた。しかし2月23日から、これも待望のモレの卵をまかせてからは、オッキの巣ごもりを邪魔しないように心掛け始めた。掃除も慎重に・・・しなくても、掃除機の音にもオッキは箱巣を離れないので安心だが、他のカゴの卵検査を始めると、その気配だけで出てきてしまう。週に一回の検査は、羽数統制のためには欠かせないので、抱卵中の卵を置いてなかなかカゴに帰ろうとしないオッキに、やきもきする事になった。まったく我ながら身勝手なものだ。
 抱卵の16日後に孵化とすると、孵化予定日は3月11日となる。その11日、カゴの前で中の様子をうかがったが、何もわからなかった。抱卵の開始が夜だったので、少し遅れるかもしれず、基本的に土曜日に卵検査をしているので、12日に様子を見ることにする。
 そして12日、他のカゴの検査を始めると、その様子を察したオッキは、例によってカゴから出て行く。箱巣をのぞくと、ゲン作、い草と巣草の見事な巣の中に、小さな赤むけイモムシがいた。さすがにオッキは素晴らしい・・・、と感動していたが、それ以降もヒナの鳴き声は聞こえてこない。果たして育てているのだろうか。何しろオッキとゲンにとっては初めての育雛体験だ。
 不安になり、半ば生存をあきらめつつ、孵化4日目にのぞき見したところ、ヒナは生きており、極わずかながら、そのうにエサが確認された。少々安心したが、この調子では未熟児になるのではなるかもしれないとの疑念は残った。しかし、その後順調に育雛し、孵化十日を過ぎると、エサをねだる大きな声が聞こえてくるようになった。やはりオッキは偉大であった(ゲンもそれなりに協力してはいた)。
 孵化16日目、オッキ・ゲンから予定通り引き継ぐ。我が家では珍しい春生まれなので、ハルと名づける。体重21gと同時期のヤッチが26gあったのと比較すれば小柄だが、鳴き声も大きく、体格のわりに口も大きい。食欲は旺盛で、消化が早い健康優良児だ。
 体重も日に日に増えていき、孵化21日目には28gに達した。すでに見た目にも小柄とは言えない。文鳥の体格は、ある程度卵の大きさによって決まっていて、小さい卵から生まれた文鳥は、成長しても小柄なものと今までの経験で考えてたが、これは考えを改める必要がありそうだ。
 実母のモレは非常に小柄、実父のシマはかなり大柄、でこぼこ夫婦の子の成長が楽しみだ。

 そのでこぼこ夫婦、ハルとなる卵がオッキたちの箱巣で誕生した後も、残しておいた有精卵1個(擬卵4個)をしっかり抱卵していた。これまで孵化直前に抱卵をやめていたので、きっと卵の中でモゾモゾ動くのが感じられると、気味悪く思って脇に出してしまうものと想像し、次の繁殖期には変わるかもしれないが、きっと今回も抱卵をやめてしまうに相違ないと考えていた。そのため、わざわざオッキたちに托卵したのだが、今回に限って抱卵をやめる様子がない。孵化予定日が近づいても、モレとシマは完全交代制で抱卵を続け、有精卵を脇に押し出す様子もないのだ。ひょっとしたら、こちらも誕生するかもしれない。そう考えると、飼い主として、いろいろ皮算用を始める。
 オスとメスに育てば、それぞれカンとヤッチの嫁と婿に・・・、どちらもオスなら・・・、どちらもメスなら・・・、考えつつ、孵化予定日の16日、箱巣をのぞくが孵化していなかった。翌日はのぞき見をしなかったが、変わった様子はなく、18日の放鳥時間、めずらしくモレとシマが同時に遊びに出てきたので、「これは!」と思いのぞき見た。ところが不思議な事に、2日前に孵化間近に見えた卵が消え去っていた。箱巣をひっくり返し、底の新聞紙を取り替えて探したが、こん跡一つ見つけられなかった。
 狐につままれた気分になり、あらぬ想像をする。真っ暗な箱巣の中、お腹の卵から何やらうごめく小さな物体が出現した時・・・。
 「きゃ〜、何か変なのがいるわ!!」
 「あ〜〜!これ、ボク知ってるよ!イモムシだよ!お店にいる時食べた事あるんだ!」
 ・・・以下省略。
 ・・・、いや、きっと慢性的に飼育数抑制をはかっているボケ飼い主が、無意識のうちに卵を捨ててしまったに相違ない。
 とりあえず、モレとシマが孵化しても良い時期まで抱卵を続けたのは、前進ということだろう。養子先でハルも生まれたので、箱巣をつぼ巣に切り替え、今シーズンの産卵はこれまでにしてもらえればと思う。

2005・3
 遺伝に関連して文鳥の品種の話を『文鳥問題』に掲載しました。

 八代目のヤッチは、ヒナ換羽が進み迷彩柄になっている。さえずりは結局実父のゲンの真似、つまりブレイ流になるようだ。昨年ゲンがブレイを追い掛け回したように、ヤッチはゲンに付きまとっている。

 そのヤッチの嫁になるかもしれないヒナ、モレとシマの子どもは誕生していない。前回モレの卵を少し早く孵化させようと小細工したが(抱卵が始まる前に抱卵中の別の文鳥に托卵)、結局失敗した。モレの抱卵時期が予想を超えて遅かったのが要因で、モレがそのまま温めていた卵も、やはり途中で抱卵拒否の憂き目にあった。
 相変わらず産卵周期の早いモレは、2月21日、箱巣の上ぶたをひっくり返し、巣の中の卵をすべて放り出し(モレがやったかシマがやったかは不明)、さっさと次の産卵を始めた。ちょうど前日の20日から、オッキが抱卵をはじめたところで、今度は産卵時期があまりずれていない。そこで、『特殊小細工作戦パート2』を懲りずに実施する事にした。23日夜、予定通り2個産まれていたモレの小ぶりの卵を、オッキのほれぼれする立派な卵(感覚的にはモレの卵の2倍ありそうだ)と取り替え、今度はそのまま任せ、オッキとゲンに仮母になってもらうというわけだ。
 もしうまくいけば、オッキとゲンに育雛を経験させることが出来、オッキの今シーズンの産卵もこれで止める事が出来るかもしれない。また、もし育ったヒナがオスの場合、夫婦にしたいカンと年齢差も最小限で済む。そういった成功すれば良い事づくめの目論見だが、失敗したところで、モレ・シマ夫婦の来シーズンでの成長に期待すれば良く、それほど切実な気持ちはない。うまくいったら、ラッキーといったところだ。
 3月1日検卵したところ、1個は割れ、1個は有精卵であった。この有精卵がどのようになるかは、神のみぞ知る。

 昨年夫のガブに先立たれ一羽暮らしを続けるソウは、奇怪なさえずりもどきを繰り返し、オス文鳥を惑わす危険な文鳥になっている。情夫と思い定めているらしい父違いの妹モレの夫シマとはあい引きを繰り返し、モレとシマのカゴに乱入する事もあり、モレ・シマの2世誕生を願う飼い主をはらはらさせたが、最近本命のゲンに気をとられるようになった。
 もともとゲンはその容姿、つまり体型、色柄、目つきがガブにそっくりで(ゲンはガブのひ孫)、寡婦となったソウが最初に接近したのはゲンであった。いなくなったと思ったら、案外また現れたといった感じだろう。何しろガブのなくなった頃のゲンはヒナ毛の残る迷彩柄だったので、この酷似した2羽が並んでソウの前に現れたことはないのだ。
 いなくなった夫の姿をゲンに見出したソウはすり寄ったのは自然と言える。しかし残念な事に、ゲンは年上には興味がないらしく、きわめて邪険にあしらわれてしまったのだ。ソウにしてみれば、夫が記憶喪失にでもなってしまった・・・などとつまらぬドラマ仕立てに考えるのも楽しいかも知れぬ。
 とにかく、本命に相手にされないソウは、他のオスたちと適当に浮名を流していたが、ゲンに心境の変化が起こったようで、近頃は後ろをこっそり付いてくるソウをそれほど邪魔にせず、まれに交尾までするようになった。ソウは大喜びし、ゲンとオッキのカゴに進入するあつかましさを示している。今後も目が離せない存在だ(産卵しないので助かる)。 
 なお、夫は浮気だが、オッキは妻の鏡で、夫の浮気を目撃しても何も文句は言わない。そして自分は他のオス文鳥と浮気をしない(実は飼い主と相思相愛)。

 ソウの浮気相手は、ゲンやシマのみならず、ノロ、クラ、キタの婿3羽も含んでおり、擬人化して考えなくともただ者ではないが、人間で考えたらおそろしい話はもっとある。
 問題は我が家の婿どもが、オスとメスの区別が付かないところにある。まず、ゴマ塩亡き後、浮気したくても相手がいなくなり、同居のクルの世話に専念しているオマケが、ノロに襲われる。ぼんやりしていると背中に乗られるのだ。そして、オマケに逃げられたたずむノロの上にはシマが乗る・・・。ちなみに、オマケは娘婿のクラにもねらわれている。何しろオマケとセーヤの父娘はそっくりな外見なので、クラには同じに見えるようなのだ。
 ソウにせよクラにせよ、外見で判断するところに、文鳥のすごさを感じる。

2005・2
 桜文鳥ちゅんのすけ君の成長する様子が楽しみな『ちゅんのすけの部屋』と、白文鳥スピカ君との毎日が素晴らしい『すぴといっしょ。』と、今後の文鳥写真に期待したい『DrasticGallery』とリンクいたしました。
 とりあえず『文鳥の系譜』を書き足しました。また長らく同時進行で書いていた三つの話題のうち、暖房の話とペットロスの話を『文鳥問題』に掲載しました。あと遺伝の話で当分ネタ切れになるものと思います。それから、文鳥たちのそれぞれの写真館に新しいものを追加しました。
 (追記)2月5日に近親交配の問題に関連して、最近読んだ『文鳥様と私』と言うマンガで、気に  
     なって仕方がなかった卵の管理についての一文を補足しました。

 八代目のヤッチは一月の初めにひとりエサとなる頃には、オスらしき兆候をかすかに見せ始めていたが(攻撃的になり、まれに手の中でグチュグチュとつぶやく)、20日に手を上下にさせるとダンスをするかのような動作でのどをかすかに鳴らし、オスと確定した。
 その後も、飼い主がエサの取替えや他の文鳥たちの送迎の手伝い(邪魔ともいう)ながら順調に成長し、一月末にはヒナ換羽が始まっている。一体どのような姿、どのようなさえずりになるのか、楽しみなところだ。

 このヤッチは卓上の犬用水飲み器で水浴びをするのが習慣になっている。台所での手のひら水浴びには興味がなく、見に来ることもない。この点、母親のオッキに似ている。結局100円回転鏡を回す芸当を会得しなかったのも母似だ。しかし姿のほうは、頭の形などますます父に似てきたように思える。
 ヤッチの両親であるゲンとオッキの夫婦関係は不思議で、毛づくろいをしたりベタベタとしているのを見たことが無い。抱卵の時以外は、放鳥時にちょこまかと2羽で小づき合いをしながら動き回っているが、大きなケンカをする事はない。まるで小さな頃の幼馴染の悪仲間そのものだ。
 それでいながら、オッキは浮気するでもなく巣篭もりするし、ゲンもそれは見事に巣作りをし、放鳥時間以外は抱卵も手伝っている。お互いを一体何だと思っているのだろう。
 なお、我が家には初代ヘイスケの血が薄まると手のひら水浴びをしなくなるという法則があったが、ゲンはものの見事に打ち破り、その常習者になっている。

 ヤッチがオスと確定した事で、モレとシマの二世誕生への期待がさらに高まった。何しろ、その子がオスでもメスでも、未来の配偶者はすでに存在するのだ。7代目、ガニ股ながら卵を産みっぱなしでシングルライフを楽しむカンと、期待の若君八代目のヤッチ。
 しかし卵を産み、有精卵となるまでは良いが、孵化直前で抱卵を止めてしまう失敗が二度続いた。結局まだ若いのが原因で、来シーズン、さらに先には必ずうまくいくと思う。したがって普通なら手出しをせずにおくところだが、カンの婿になるなら年の差は少なくしたいと言う思惑と、モレの産卵が過剰となっている不安があり、とりあえず孵化までもっていきたいと考え、少し小細工してみる事にした。
 孵化育雛だけなら他の文鳥たちに養父母になってもらえばよほど確実だが、それでは産卵間隔を開けることにならないし、出来れば自分たちで育てさせたい。そこで、モレが2個産んだらすぐに、その卵を抱卵中のオッキにまかせ、モレが抱卵をはじめたら戻してみる事にした。これなら、モレは抱卵2週間程度でヒナの顔を見ることになる(育雛未経験のオッキとゲンにそのまま任せたいのだが、産卵期がずれているの途中で抱卵を止める可能性が高い)。
 結局、孵化直前で脇にどけられ失敗する可能性が高い気もするが、とりあえず29日に作戦を開始する。うまくいけば、2月半ばに孵化する事になるが、さてどうだろう。

 寒い季節、一番心配されるのは7歳のクルだ。もともとが未熟児であったが、一昨年の骨折以来軽快さを失い、最近はお尻も汚れがちだ(邪魔そうなのでお尻の周りの羽毛を少々切った)。クチバシの色は濃すぎてむしろ不健康に見える。放鳥時にはノロに追い掛け回され、大変な思いをし(逃げ方が下手)、巣の中で2歳年下の同居鳥オマケ(実は孫)を「キューン・キューン」と呼んでばかりいる。
 オマケは他のオスに追われている時は助けようともしないが(むしろ不倫したとクルを怒る)、もともと自分が望んでの同居なので、ずいぶん仲良く生活している。湯たんぽ代わりに重宝な存在だ。相方が卵を産まないせいか、今頃から換羽をしそうな気配が漂わせている。この点は案外諦めが早い。
 オマケためにも、クルには長生きして欲しいところだ。

2005・1
 11月末に誕生した我が家の八世は、育雛初体験の養父母のもとで問題なく成長していった。エサをねだる鳴き声はほとんど聞こえなかったが、放鳥時間にセーユと交代したグリが、ヒナの様子をしばらく確認するとさっさと遊びに出かけてしまうため、 その留守に日に日に成長していく様子を観察する事が出来た。
 生後16日目の12月14日に養父母から引継ぎ、餌づけを開始する。今回はハムスターケージを改良した中に、電球式とシート式の保温器が完備 した温室を使用する。エサは昨年同様『キクスイ』のアワ玉(卵の殻はピンセットで除去)に文鳥ヒナ用粉末を混ぜたもの、そしてカルシウム粉(ボレー粉・カトルボーン・煮干粉・『バードカルシウム』・スピルリナ)と青菜ペースト(小松菜・豆苗)だ。
 ほとんど鳴き声を出さないおとなしいヒナだが、食欲は旺盛で、引き継いだ時にすでに26gあり、生後20日目には30gに達した。このあたりは実母のオッキ を思い出させる。しかし容姿は真っ黒な桜文鳥ヒナであった母には似ず、クチバシはピンクと黒のストライプとなっていて、頬や翼などに白い羽毛が多い。この点実父のゲン、その母のセーヤ、さらにその父のオマケといった 、飼い主の好みとは無関係に脈々と受け継がれている血の流れをしっかりと継承しているようだ。
 名前はクチバシが虎模様なので「オトラ」にしようかと思ったが、もしメスであった時、「トラちゃん」では現代的ではないので、八代目にちなんでハッチならぬ「ヤッチ」とする事にした。
 ヤッチは、体重は28〜30gで安定し、きわめて順調に成長、年末には初飛行するようにもなった。鳴き声がおとなしいのでメスかと思ったが(今までこの傾向はメスだった)、何やら「 キュー、ギュル〜」とつぶやく時があるのでオスかもしれない(今までこの傾向はオスだった)と考えつつある。 オスでも初代のヘイスケなどは静かであったし、八代目の子孫だが、インブリードがあるので、ヤッチは約18%もヘイスケの遺伝子を持つ計算になるから、それに似ても不思議はない気もする。どちらにしても、楽しみなところだ。
 
 一方、いわゆる「鉄板(テッパン」(確実な予想の事)と思われたモレの2回目の卵(有精卵)は孵化しなかった。
 孵化予定の数日前から、抱卵に飽きたような様子を見せ始めたので不思議に思っていたが、予定日の数日過ぎても孵化せず、12月11日確認したところ、だいぶ大きく育った状態で中止卵となっていた。さらにモレはその2、3日後には次の産卵を始めてしまう。この前の産卵間隔も短かった事から推測すると、どうやらモレの産卵周期は普通の文鳥より早く、抱卵日数が足りなくな ってしまうらしい。
 それならそれで、初めの卵を数日だけ他の抱卵中の文鳥に温めてもらえば済むと考えていたところ、何やらモレの緊張の糸が切れたようで、その後顔色一つ変えずに産んだ、早くも3回目になる卵をまともの抱卵しなくなってしまった。完全巣篭もりはせず、放鳥時間はしばらく遊んでいる(数十分すると帰る)。産卵から一週間以上経過した箱巣の中を見ると、いつの間にやら巣材もなく何とも殺風景となっていて、無精卵がただ転がっている状態であった。
 この状況に夫として危機感を持ったのか、お気楽な遊び鳥シマが自分でカゴに帰るようになった。ところが困った事に、それに浮気相手がくっついて行く。モレにとっては父違いの姉、6歳になる寡婦のソウが、押しかけ女房になろうと企むのだ。シマはこの浮気相手である侵入者を、いちおう追い出そうとするが、厚かましいソウは平気で箱巣に入り込もうとし、小競り合いとなっている(モレは相手にせず箱巣から出てこない)。
 かえってこの邪魔者の出現で、モレとシマの夫婦が結束を固いものにしてくれることを願っているが、さてどうなる事だろう。
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