It Could Happen To You

It Could Happen To You #

基本データ #

  • 作曲年:1944年
  • 作曲:Jimmy Van Heusen (1913-1990)
  • 作詞:Johnny Burke (1908-1964)

参考音源 #

Relaxin’ with Miles Davis Quintet (1956)
有名なセッション。ずっと2フィールをキープするリズム・セクションにも注目。コード進行もチェックされたし。キーはE♭。
Frank Sinatra / Close to You and More (1957)
ゆったりとしたテンポ。コード進行もオリジナルに近いのかもしれない。キーはD♭。
Monica Zetterlund and Bill Evans / Waltz For Debby (1964)
印象的なイントロと軽快なテンポ。キーはB♭。

曲目解説 #

1944年のパラマウントミュージカルコメディ映画 And the Angels Sing の挿入歌である。

メロディとコード #

以下キーをE♭として解説する。

1-4小節目 #

原曲にあたったわけではないが、JazzStandard.comの記事に、「メインテーマにおいて、ジミー・ヴァン・ヒューゼンは半音上行のベースラインを用いることで、明るい感じを生みだし・・・」とあるために、冒頭の4小節コード進行は、E♭maj7 | Edim7(C7/E) | Fm7 | F♯dim | であると考えられる。これは有名なDavis(1956)のアルバムも採用している。

ただし、E♭maj7 | Gm7 C7 | Fm7 | Am7(♭5) D7 | というコード進行の採用も多い(例えばSinatra(1957))。

2小節目のEdim7は厳密にはC7/Eであり、このC7にリレイテッドマイナーコードを足してGm7 C7とし、また、4小節目のF♯dim7は、E♭dim7の転回形であるからトニック・ディミニッシュであり、それの代理であるAm7(♭5) D7 に置き換えたものである。

Am7(♭5) D7 (♯IVm7(♭5) VII7)がトニックディミニッシュE♭dim7(Idim7)とその転回形の代理になるかを簡単に説明すると、E♭dim7のスケール(E♭ディミニッシュスケール)とD7のスケール(D半音-全音ディミニッシュスケール=いわゆる「コンディミ」)は、同じ構成音からなり、実質同じスケールであるために、代理機能がある。さらに、 D7に対するリレイテッド・コードであるAm7(♭5)(Am7のこともある)を前置することができる、という理屈である。

5-8小節目 #

一般には、E♭maj7 | A♭maj7 | Gm7(♭5) | C7 | と書かれていることが多い。

しかし、例えばDavis(1956)は5-6小節目をB♭m7 E♭7 | A♭maj7 D♭7 |のように演奏している(5小節目はサブドミナントへのセカンダリードミナント、6小節目は、サブドミナントメジャーとサブドミナントマイナー代理)し、7-8小節目をG7 | C7 |と演奏するケースも多い(G713 G7(♭13) | C7(sus4)9 C7(♭9)のようなテンションのラインも好まれる)。ほかにZetterlund(1964)もこれを採用している。

9-10小節目と25-26小節目 #

Fm7 | B♭7 | (E♭maj7)という、いわゆる「トゥ・ファイブ(・ワン)」のチェンジであることが多い。またメロディに合わせて、B♭7sus4とする配慮をすることもある。

しかし一方で、Fm7 | A♭m | (E♭maj7) のようにする演奏もある。メロディそのものにA♭m(サブドミナント・マイナー)にする手がかりはないのだが、あえてこのように演奏することが多いということは、原曲がそうなっていた可能性もある。

その中間的な解釈として、いわゆる「トゥ・ファイブ」の「ファイブ」をB♭7(♭9)のようにして、サブドミナントマイナーの香りを残すような演奏も聞かれる。

前半(すなわち10小節目)をドミナント、後半(26小節目)をサブドミナントマイナー(あるいはその逆)とするような譜面もあるが、このように決めてしまうのもひとつの方法ではあろう。ただし、それが「標準的な演奏方法」とみなすほどの根拠はないように思われる。

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