リスニング

リスニング

音楽は聴覚芸術ですから、聴音がとても重要です。

ここでいう聴音とは、メロディやコードだけでなく、リズム、ダイナミクス、アーティキュレーションなど様々な事象を含みます。

聞き取れないことは表現できない

語学教師をされている方からうかがったのですが、たとえばLとRの発音の違いは、発音練習とリスニングの訓練の両方を同時に行うことが一番効果的なのだそうです。なぜなら聞き分けられないことは発音し分けることができず、また発音し分けることができないのは聞き分けることができないからだそうです。

これは音楽にもあてはまります。私は、ある先輩と音源を一緒に聴きながら、一時停止や早送りを繰り返しながら、実際の演奏で起こっていることについて、まるで指で指すようにポイントアウト(指摘)してもらうことで、リズムやアーティキュレーションの実際について学んだ経験があります。

この訓練方法を学んだことで、それまで漠然としか聞けていなかったリズムやアーティキュレーションについて、実際にどのように演奏されているか、そして自分の演奏と具体的にどう違うか、などについて、より客観的かつ正確に捉えることができるようになりました。

この過程が、自分のジャズのフィーリングに対して具体的に取り組む重要なきっかけになりました。

このように、実際の音源には、練習や演奏方法についての重要なヒントや情報がたくさん隠されているのですが、場合によっては、独力ではなかなかそれに気づくことができません。

私がそうであったように、一緒に音源を聴き、それをポイントアウトして初めて気づき、そして理解できることがあるのです。したがって、私のレッスンでは「聴くこと」を重視いたします。

ケース・スタディの重要さ

どんなことでも、ケース・スタディ(事例研究)を根気よくすることで実を結びます。

音楽は聴覚芸術です。確かに楽譜も理論も重要ですが、それらよりもはるかに大切なのは、実際の演奏を注意深く慎重に聴くことです。

ジャズの演奏をほとんど聴かなければ、理論書をどれだけ理解してもジャズを演奏することはできないでしょう。しかし、理論書をほとんど読んだことがないすぐれたジャズ・プレイヤーはたくさんいます。彼らは例外なく、数多くの演奏を注意深く聴いているものです。

視覚(楽譜)や思い込み(知識)の存在が、聴覚の判断を鈍らせることがあります。

たとえば、スタンダード・ナンバーのコード進行は、ほぼ録音の数だけバリエーションがあるといっても過言ではありません。曲集に載っているコードだけが正解ではありませんし、よく知られているコード進行がストレート・メロディに則さない場合さえあります。

苦労してソロを採譜しても、それが手持ちの曲集とは異なるコード進行で演奏していることに気づかなければ、そこで分析は止まってしまいます。

また、不適切な演奏を続けたり、細かなことを気にせずにそのままにしてしまうと、いつまでたっても細かな音楽表現が身につかないという結果にもなりかねません。

ジャズ・ミュージシャンのなかには、大雑把な人もいますが、几帳面で律儀な演奏をするプレイヤーも少なくありません。これはケース・スタディをきちんと積み重ねたものだけが実感できる事実でしょう。

一度にすべてを完璧に聴いたり分析したりすることは実際には大変なことで、場合によっては投げ出してしまいそうになることもあるでしょう。したがって、課題を絞りこみ、また、レベルに応じて順序だてて取り組むことで、ジャズの理解を一歩ずつ確実に深める道筋を示すこともできるかと思います。

ぜひ個人レッスンを活用することを検討してください。